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ツイッターの力学に異論続々

2010年7月15日15時30分

写真:斎藤環さん斎藤環さん

写真:香山リカさん香山リカさん

 140字のミニブログ「ツイッター」がもてはやされる一方で、批判意見も表に出るようになってきた。「いま沸き上がる『ツイッター亡国論』」(週刊ポスト5月7、14日号)、「ツイッターに疲れた…なう」(SPA! 6月22日号)などと雑誌の特集が続いたほか、疑問を投げかける識者も現れた。

 ツイッターは「情報量ゼロ」のコミュニケーションであり、「日本人の未熟化」の表れだと週刊ポストでコメントしたのは、精神科医の斎藤環さん。同じく精神科医の香山リカさんは雑誌「創」7月号の連載コラムで、フォロワー(読者)の数に一喜一憂する世間の風潮が「わからない」と書いた。

■「閲覧数へのこだわり なぜ?」

 斎藤さんと香山さんに話を聞いてみた。二人がそろって首をかしげるのは、ツイッター利用者がフォロワー数にこだわり、それが多いほど価値があるとみなす風潮だった。

 「ブログは市井の人の潜在的な才能を知らせる効果があったけれど、ツイッターで注目されるのは著名人。内容のよしあしでなく名前優先で読む人が多いのは、反動的ですらある」(斎藤さん)

 「数が多い人が勝っているという思いこみに基づく競争は、まさに市場原理。こんなところまで新自由主義的な論理がまかり通っているかと思うと、うんざりです。有名人にとっては宣伝の道具なのに、普通の人たちに、有名人とコミュニケーションできたかのような幻想や錯覚を抱かせているだけ」(香山さん)

 ツイッターが話題を集めて約1年、積極的な効用を指摘する声が目立つ。政治家のツイッター利用を、政治と有権者の距離を縮め、政治参加のしくみに変化を促す機会と期待する声も少なくない。しかし香山さんは「刹那(せつな)的な高揚感にすぎないのでは」と懐疑的だ。本物の政治参加になりうるかは疑問だという。

 議論の場をブログからツイッターに移しつつある論客が増えている点も、斎藤さんは危ぶむ。「少ない字数での瞬間的な応答が増えれば、ますます、まともな論壇の議論が少なくなる。対立があっても単なる感情的なぶつかりあいばかりで、論争に発展しない。限りなく一方向に向かう内輪メディアだと思う」

 クリエーティブな表現が現れてくる可能性に期待すればいいのでは? そう尋ねると、香山さんは「飯食ったとか、新幹線乗ったとか、書かれているのは、あくまでリアル。80年代の『ビックリハウス』のように、別の自分になれるという願望もないし、意外にクリエーティブでない気がする」。

 確かに雑誌のツイッター特集などには、うさん臭いもうけ話やマーケティング利用の勧めも多い。どんな力学が働いているのか。さらなる議論を歓迎したい。(藤生京子)

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