あなたは中国人にマンションを売りますか?

あまりにも無防備すぎる日本の不動産市場

2010.09.21(Tue) 姫田 小夏

中国

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 上海にある法律事務所には、日本の不動産購入について多くの問い合わせが来る。だが、「中国では人民元から外貨への両替に制限があるので、『現状、合法での購入は難しい』とお答えしています」という。

 中国政府は不動産投資を目的とした人民元の外貨への両替を認めていない(事業投資ならば可能)。そのため、闇で両替した現金をトランクにつめてハンドキャリーで持ち出すことになってしまうのだ。

 あるいは「人民元から外貨への両替は1人当たり年間5万ドル」という枠を利用し、「親族で集めて2000万~3000万円にする」という手口もある。また、深センを経由して香港に持ち出し、香港の口座から送金を行う「深センルート」もある。さらには、香港や英国領バージン諸島に会社を設立するという名目で送金する(事業投資ならば両替ができる)ケースもある。

「不正」な勢力が日本の不動産を狙っている?

 日本政府が警戒しなければいけないのは、こうした海外からの不透明な資金の流入だ。

 2008年3月、マネーロンダリングやテロ資金供与の防止を目的に「犯罪収益移転防止法」が施行された。不動産業界においても、売買を経由して違法な資金が入り込まないように、「疑わしい取引の届出」が義務づけられるようになった。

 中国人の不動産購入には、極端に高額な物件をキャッシュで購入したり、「どんな物件でもいいから売ってくれ」「購入手続を急いでくれ」などと買い急ぐケースが散見される。犯罪収益移転防止法では、これらも「疑わしい取引」と解釈している。疑わしい取引の届出件数は2008年に21件だったものが、2009年には33件に増加している。

 上述した「マンションのチラシ」に印刷されていた「至急」という文字も、不動産専門家によれば「疑わしい」ことがあるという。

 その専門家は次のようにコメントする。「『買い急ぐ』のは、何らかの形でマンションに潜り込もうとする意図があるからとも受け取れる。マンションに入ってきてほしくない買い主かもしれない」

 もし、不正に潜り込もうとする勢力であれば、それが後々にマンションの風評となり、資産価値の下落にもつながりかねない。「他の住民のためにも、売り主は買い主がどんな相手かを契約前に仲介会社に調べさせることが必要」と、専門家は指摘する。

ゆるすぎる不動産取引の規制

 前出の上海の法律事務所によれば、日本の赤字経営のスキー場、温泉旅館、保養所などが中国人の買い手を探して大々的に売り出されているという。

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