シリコンバレーで考える 安藤茂彌
【第36回】 2010年9月22日
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安藤茂彌 [トランス・パシフィック・ベンチャーズ社CEO、鹿児島大学客員教授]

海底に国旗を立てて領有権を主張する
中国に日本はこんなに無防備でいいのか

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 去る7月に米国のクリントン国務長官はアセアン会議で「ASEAN諸国のこの海域での航行の自由を守ることが重要だ」と発言し、中国代表との間で厳しい論戦を展開した。ASEAN諸国が狙うのは米国と連携した「中国包囲網」作りである。

 中国の挑発行為は日本に対しても行われている。今年4月には中国海軍の艦艇10隻が沖縄本島と宮古島の間の公海を南下し、中国のヘリが監視中の自衛隊の護衛艦に異常接近する事態が発生している。今月に入ってからも尖閣諸島で海上保安庁の巡視船と中国の漁船が衝突する事件が起きている。

 すでに新聞等で報道されている通り、中国は猛烈なスピードで軍事力を増強している。軍事予算は過去20年間に18倍に膨れ上がり、今では米国に次ぐ第2位の軍事大国になっている。2009年での軍事予算は米国の6610億ドルに対して、中国は1000億ドルとまだまだ開きがある。だが、米国が近年軍事予算を削減しているに対し、中国は毎年予算を大幅に増やしており、その差は縮まりつつある。因みに、日本は510億ドルで第6位である。

 日本と在日米軍の軍事力は中国、北朝鮮、極東ロシアの兵力と比較すると明らかに見劣りする。日米の戦力を合わせても桁が一桁少ない。

 中国のこうした軍備増強は、1982年に策定された「海軍海洋計画」と呼ばれる国家計画に基づいている。それによると、2000-2010年に沖縄、台湾、フィリピンを結ぶ「第1列島線」内の制海権を確保し、2010-2020年には「小笠原諸島、グアム、インドネシアを結ぶ「第2列島線」内の制海権を確保して航空母艦の建造を行う。そして2020-2040年には「米海軍による太平洋、インド洋の支配を阻止する」最終ゴールを達成する計画となっている。

 中国は今年中に原子力航空母艦の建設にも着手することを明らかにしたが、これも「海軍海洋計画」に沿って実施されるものである。数年後にこれが完成すれば極東の米軍兵力にかなり接近した兵力になると考えられる。日本近海に中国の航空母艦が出没するのも時間の問題になっている。

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安藤茂彌 [トランス・パシフィック・ベンチャーズ社CEO、鹿児島大学客員教授]

1945年東京生まれ。東京大学法学部卒業後、三菱銀行入行。マサチューセッツ工科大学経営学大学院修士号取得。96年、横浜支店長を最後に同行を退職し渡米。シリコンバレーにてトランス・パシフィック・ベンチャーズ社を設立。米国ベンチャービジネスの最新情報を日本企業に提供するサービス「VentureAccess」を行っている。VentureAccessホームページ


シリコンバレーで考える 安藤茂彌

シリコンバレーで日本企業向けに米国ハイテクベンチャー情報を提供するビジネスを行なう日々の中で、「日本の変革」「アメリカ文化」など幅広いテーマについて考察する。

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