郵便不正事件で証拠品として押収されたフロッピーディスク(FD)のデータを改ざんしたとして、証拠隠滅の疑いで逮捕された大阪地検特捜部の主任検事、前田恒彦容疑者(43)が、最高検の調べに対し「故意ではなく過失だ」と供述し、容疑を否認し続けていることが分かった。最高検は意図的な改ざんとみて調べているが、前田検事は「(裁判で証拠とされた)捜査報告書に正しいデータが残されている以上、FDを改ざんする意味がない」と主張しているという。
前田検事は09年7月中旬ごろ、FD内に記録された偽証明書のデータの最終更新日時を「04年6月1日1時20分6秒」から「04年6月8日21時10分56秒」に改ざんした疑いが持たれている。
改ざんしたFDは証拠として裁判に提出されず、09年7月16日にFDの所有者の厚生労働省元係長、上村勉被告(41)=虚偽有印公文書作成・同行使罪で公判中=側に返還された。一方、改ざん前のFDの記録は「捜査報告書」に添付されて開示され、弁護側の請求で証拠採用された。捜査報告書は特捜部の事務官が作っていた。
前田検事は逮捕前の大阪地検の内部調査に「いろいろやっていたらFD自体のデータを書き換えてしまった」と説明。検察関係者によると、逮捕後の最高検の調べには「捜査報告書があることは知っていた。わざわざ改ざんするわけがなく、書き換えて遊んでいただけだ」という趣旨の供述をしているという。
また、検察関係者によると1月末~2月初めごろ「前田検事が郵便不正事件の証拠を改ざんしている」と、公判担当の検事らを巻き込んで検事同士のけんかになっているとの話が地検内で広まった。前田検事の上司が事情を聴いた結果、特捜部としては「問題になるようなデータ改ざんではない」と判断。大坪弘道特捜部長(当時)が小林敬検事正と玉井英章次席検事に「検事の間でトラブルはあったが問題はなかった」と報告した。
毎日新聞 2010年9月23日 東京朝刊