「ハリポタ」に登場する闇の帝王、ヴォルデモート卿は余りにも皆から畏怖されているため、本名で言及されることはありません。

「例のアノ人(You-Know-Who)」とか「名前を呼んではいけないアノ人(He-Who-Must-Not-Be-Named)」という隠語が使われるわけです。

昨日のFOMCのプレス・リリースではベン・バーナンキ議長はこのJKローリング(「ハリポタ」の作者)の創造的才能からヒントを得て、マーケット・ウォッチャーを「隠語責め」にしました。
昨日のリリースの中でFRBはインフレーションという言葉を5回も使用していますが、その全ては「インフレの低すぎ」、つまりデフレに実際のところ言及しているのです。

たとえば:
The Committee(中略) is prepared to provide additional accommodation if needed (中略)to return inflation (中略)to levels consistent with its mandate.
「委員会はインフレが我々の使命に照らして首尾一貫している水準にまで戻るようにするために若し必要であれば追加の緩和をする準備がある。」

という感じです。

バーナンキ議長がFRBの議長に就任した当初はグリーンスパン前議長のような、わけのわからないしゃべり方ではなく、シンプルな意思疎通を目指していました。

ところが最近のFRBのリリースはどんどん「魔法界的」になっています。

今回のリリースでインフレという言葉が使われている個所は全て「インフレの低すぎ」に言及しているわけで、それならもっと単純に「デフレ」と表現した方がわかりやすいのに、口が裂けても「デフレ」とは言わないわけです。

この、わざと「デフレ」という言葉の使用を頑なに拒んでいる事実が逆にデフレの怖さの凄味を増す効果を生んでおり、それがドル価値のディベース(*)に一役買っているわけです。これがFRBによるあからさまなドル価値の薄め策であることは言うまでもありません。

(*):ディベース(de-base)=価値・品質・品位をおとしめる事