漁船は進路を変えずに一定の速度で走っていた巡視船に斜め後ろから近づき、大きくかじを切って衝突する様子が現場で撮影されたビデオに映っていたことがわかりました。海上保安庁は、漁船が故意に巡視船に衝突したことを裏付けるものとして、さらに詳しく調べています。
“故意に衝突”ビデオで裏付け NHKニュース
このような境界線付近での事件・事故では国同士で「むこうが悪い」「いや、先に手を出したのはそっちだ」という言い合いになりがちです。だから海保などの沿岸警備隊は、後で証拠になるビデオを撮影しておきます。今回はそれが役に立ちました。
しかしハッキリした証拠がでたところで、揉め事が片付くわけではありません。そもそも事件・逮捕の場所が中国領海なのか、日本領海なのかという対立があるからです。中国側の主張をとるならば、事件現場に日本の巡視船が入ってきていること自体がそもそも不法だからです。
海保の数では手に負えない――中国漁船の浸入が増加
今回の事件の直接原因は、中国の漁船団が日本の領海で違法操業したところから始まりました。沖縄タイムスの報道(9/9)によれば、中国漁船の違法操業は大規模で、去年に比べて増えています。その数は多く、海上保安庁の手に余るほどだそうです。また現地の市長や、漁業組合の代表者は日本政府に毅然とした対応を求めています。
■「手に負えぬ」
今年8月中旬には1日で最大270隻の中国漁船が確認され、そのうち日本の領海内に約70隻が侵入していた―。この数に、関係者は「とても海保だけで手に負える数ではない」と吐露する。
11管によると、ことし8月から尖閣諸島周辺海域で中国船籍と思われる漁船が増加。巡視船と中国漁船が衝突した7日には160隻ほどの中国船籍とみられる漁船が同海域で確認され、そのうち30隻が日本の領海内に侵入していた。…
■国の対応要望
尖閣諸島を行政区に含んでいる石垣市の中山義隆市長は「違法操業の疑いがあるとなれば遺憾に思う。尖閣諸島は日本の領土であり、市の行政区域。海保、国にはしっかりと対応してほしい」と求めた。
八重山漁協の上原亀一組合長は「(同海域には)実態として外国の漁船が入り込んでいるため、国は黙認せず、毅然(きぜん)とした態度で取り組んでほしい」と要望した。
沖縄タイムス | 尖閣に中国船1日270隻 石垣市民、不安高まる
海上保安庁は財政悪化の余波もあり、巡視船の老朽化が著しく、そのうえ広大な日本領海・排他的経済水域に対して船の数がそもそも少ないという問題があります。更新ペースの加速、定数と人員の増加も検討せねばならないでしょう。
「漁船を解放しなければ、撃つ」 中国の漁業監視船の脅迫
漁船の浸入は、中国の海洋政策の一部です。南シナ海らでも中国はベトナム、インドネシアらと海洋問題でもめています。そこでは明らかに漁船が中国政府の尖兵として使われています。
2010年の6月、インドネシア領のラウト島から約105キロの地点で、中国の準・軍艦とインドネシアの軍艦がするどく対立する事態が起こりました。6月22日にインドネシアの排他的経済水域(EEZ)で、中国漁船10隻が違法操業を行ったのが発端です。
漁船がインドネシアによって拿捕されると、中国の『漁業監視船』が機銃を向けて
「拿捕(だほ)した中国漁船を解放しなければ攻撃する」としてインドネシアの警備艇を脅しました。
この『漁業監視船』は、所属こそ海軍ではありませんが、もと軍艦です。排水量4450トンの軍艦を改造し、ペンキを白く塗りなおして警備に使っています。もと軍艦の武装を活かして、自国の漁船を護衛しているのです。