大阪・日本橋の電器店が他人の無線LANを無断で使う機器を販売している問題で、大阪府警は22日午前、電波法違反(無線局の無許可開設)のほう助容疑で、この電器店など数カ所の家宅捜索を始めた。店の経営者ら数人から任意で事情を聴いており、容疑が固まり次第、同容疑で逮捕する方針。機器の購入者も同法違反の疑いで立件する。この機器の使用や販売を摘発するのは全国で初めて。
捜査関係者によると、捜索を受けたのは大阪市浪速区日本橋にある電器店「ファニープレイス」。ファニープレイスは、パソコンに装着する無線LANアダプターの一種で、電波法の上限の数十~100倍に当たる違法な出力の電波を発する機器を、販売した疑いが持たれている。
この日午前10時過ぎから、府警の捜査員がファニープレイスが構えている日本橋の2カ所の店舗などの捜索に着手。店員らが立ち会う中、捜査員は店頭に並んだ機器や販売資料を押収するなどした。
一方、府警は既に、ファニープレイスでこの機器を購入した数人から任意で事情を聴いた。いずれも、違法な電波を発信した電波法違反の容疑を認めているという。府警は購入者についても同法違反の疑いで書類送検して、立件する方針。
他人の無線LANに侵入し、無断でネット接続をする「ただ乗り」行為については、直接規制する法律はない。府警は「ただ乗り」に使うこの機器が違法な高出力の電波を発する点に着目、電波法違反での摘発を決めた。
西日本最大の電気街、大阪市浪速区の日本橋では、ファニープレイスなど、少なくとも5カ所の電器店で高出力の無線LANアダプターが販売されていた。捜索を受けたファニープレイスは通常の店舗のほか、近くの敷地で支店として露店販売もする。
店頭には「無銭LAN」と書いた看板や「インターネットが無料」という宣伝文句を掲げ、ネットの「ただ乗り」行為を推奨していた。そばには小さい字で「実験、研究用、海外向け商品」とのただし書きも。「違法ではないか」と尋ねると、男性店員は「大丈夫。これで捕まったという話は聞いたことない」と、逆に熱心に購入を勧めてきた。
捜査関係者は「法のすきまを狙った商売。『ただ乗り』自体の摘発は難しいが、ネット犯罪に悪用される可能性のある機器の流通を、野放しにはできない」と、強制捜査に着手した理由を明かした。
毎日新聞 2010年9月22日 13時18分(最終更新 9月22日 13時44分)