« 土を食べる | トップページ | ポール・オースター『ナショナル・ストーリー・プロジェクト』日本版! »

2010年5月27日 (木)

ウエスタン北山珈琲店…上野・入谷

Western_kitayama_02All About[カフェ]でご紹介した老舗、ウエスタン北山珈琲店
このたびAll About上で「記事は1ページにまとめてね」というフォーマット変更があり、あまり長文が掲載できなくなったので、こちらに小さなこぼれ話を。

【その一】

店名を「ウエスタン」と呼ぶ人と「北山珈琲店」と呼ぶ人がいる。いささか紛らわしいので、ご主人に正式名称をうかがってみた。

「北山珈琲店という名前にしたかったんですが、昭和40年くらいに店を開いた当時、新宿に北山という焙煎業者さんがいたので、重ならないよう『ウエスタン』と名づけたんです」

…ウエスタンとはどういう意味ですか?

「当時はウエスタンの全盛期だったのと、まあ、うちは先祖が関西にいたので、西部から来ましたという意味で。そうしているうちに北山さんが廃業して、念願の『北山珈琲店』に変えたんですが、昔からのお客さまは相変わらずウエスタンとお呼びになる。それならいっそ、オンワード樫山のように二つ合わせようというわけで、ウエスタン北山珈琲店になりました」

【その二】

ご主人の北山斗見之さんの風貌や声が「亡き春風亭柳昇師匠そっくり!」と同行者。

【その三】

取材後、北山さんは私に「神様って、いると思います?」 

珈琲の神様はいると思いますと、答えると「そうでしょう。いつもならこの日のこの時間帯はお客さまがよくお見えになるのに、お話ししている時間だけ、きれいに誰もいなかった。神様のはからいというのが、きっとあるんですよ」

確かに、私たち二人が珈琲を飲み終えて取材を始める前は小さな店内は満席で、入れなくて帰る人々もいたのが、取材中は無人に。そして取材が終わったとたんにお客さまが入ってきたのだった。不思議な真空の一時間。

【その四】

Western_kitayama_01_2

ご主人の北山さんはかつて、最後の江戸凧師だった橋本禎造さんの教えを受け、江戸凧師をめざしたことがあったそう。
理由を尋ねると「滅びゆくものに惹かれたんでしょう」。

師から「凧では食っていけないからやめなさい」というアドバイスを受けて、珈琲に本腰を入れるようになったとか。

店内に飾られた手描きの江戸凧は、北山さんが制作したもの。左下に小さく「北山屋」の屋号が入っている。

ウエスタン北山珈琲店
東京都台東区下谷1-5-1
【TEL】03-3844-2822

※きっぱりした頑固な姿勢を貫こうとするこういうお店はお客さまを選ぶので、もちろんお客さまからの評価は賛否両論。

でも、私は大好きです。お店の注意書きは、器用に立ち回ったり、そつのない言葉でお客さまを注意したりすることの苦手な、愛すべきお人柄の表れ。本を読んだり、待ち合わせをしたりの用途があるときは、他のお店という選択肢がありますから。濃厚でおいしい珈琲を飲みたいなあ、と思ったときにぜひ一度、足をお運びください。気の弱いかたも、安心してお楽しみあれ!

|

10 その他の東京のカフェ」カテゴリの記事

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/219376/48468090

この記事へのトラックバック一覧です: ウエスタン北山珈琲店…上野・入谷: