放送批評懇談会が選ぶベスト番組【ギャラクシー賞月間賞】
マンネリ化した選挙特番に吹き込んだ新風〜テレビ東京「池上彰の選挙スペシャル」
(GALAC 2010年10月号掲載) 2010年9月19日(日)配信
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「池上彰の選挙スペシャル」
7月11日放送 19:54〜22:24
テレビ東京
おもしろい! これは報道? バラエティ? 最初見た時、そんな疑問が頭に浮かんだ。テレビ東京で近頃多岐にわたって活躍している池上彰をメインMCとした、参議院選挙特番のことだ。
かつて80年代の日本の選挙特番では、様々なエンタテインメント性を追求した演出を実験的に繰り広げていた。しかしどれも単発的な現象に終わり、今日では局の個性が全く感じられない平均的なものばかりになってしまったのだ。そんな番組に辟易していた矢先、池上彰が率いたテレビ東京の選挙特番は視聴者を驚かせた。ここでは本来のストレートニュースとは異なる、両者の「らしさ」をどこまでも追求した選挙特番をつくった。そのような「らしさ」はどこから感じられるのか。
まず何と言っても池上彰の攻めの姿勢にある。独善的であるように振る舞っていた数多くの議員に対して、過去の言動を参考にし、誰しもが聞きづらいであろう質問を単刀直入に聞いていた様子からは、視聴者の本音を貫き通そうとする姿勢が窺えて大変良かった。また、池上彰と並んで出演しているタレントたちの番組への参加の仕方も素晴らしい。タレントが視聴者の疑問をうまく代弁していて、さらに池上彰とタレントとの会話のキャッチボールには安定感があり、そこには演出のレベルの高さが顕著に現れている。タレントを巧みに扱い、従来の選挙報道では見られなかったロケ方式での選挙に関する解説は、視聴者の興味を引き立てる構造になっており、最初から最後まで釘付けにさせられた。
予定調和を崩す姿勢。そこからは、新しいジャンルが生まれて来るような気がする。クリティカルかつ個性的に制作したテレビ東京の力が、また新たなジャンルを創ったと言えるのではなかろうか。その瞬間に立ち合えた時、「テレビの進化はまだまだある」と密かに、ひとりごちたのであった。(吉田正樹)
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