『週刊ダイヤモンド』特別レポート
【第99回】 2010年9月17日
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週刊ダイヤモンド編集部

宮脇修一・海洋堂社長インタビュー
「敵はフィギュアの嫌いな日本、
僕らは戦い続けなあかん」
~週刊ダイヤモンド9月25日号特集「アキバ変態(メタモルフォーゼ)」より
スピンオフ特別公開!

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 でまあ1年やったあと、ラジオ会館(※注1)という、駅前の一等地が空いているという話があった。僕らみたいな零細企業にとっては分不相応だったんですが、「この状況やったら行けるぞ」と、移ったのが98年ですな。

 移ったのと同時期に、急激にフィギュアのビジネスが広がって、僕らの会社自身も大きく変わりました。

 ちょうどそのとき僕らが、「北斗の拳」や「タイガーマスク」のキャラクターで、「アクションフィギュア」(※注2)つまり塗装済み完成フィギュアを始めたんです。

 それまでやっていた商品は、手作りの「ガレージキット」(※注3)というもので、せいぜい3000個とか5000個ぐらいが標準商売だった。それを中国で製造して、マスマーケットで1万個から3万個の商売を始めた。いきなり10倍に商売が広がったわけですわ。

 そこからアクションフィギュア文化が始まった。

3年間で1億3000万個
売れたチョコエッグ

 それから1年とたたない99年の9月に、「チョコエッグ」(※注4)で、「食玩」(※注5)つまりお菓子のオマケフィギュアのブームが起きて、もうとんでもない状況になりました。チョコエッグだけでも3年間で1億3000万個売れた。アクションフィギュアとオマケフィギュアで、いきなり大フィギュアバブルが訪れたわけなんです。

 ラジオ会館にも、海洋堂に続いてイエローサブマリン、ボークス、コトブキヤ(※注6)などが入って、完全にオタクビルに変わってしもた。

 それ以外にも、いろいろなショップが集まって、秋葉原がオタクの一大発信地、僕らにとってはフィギュアの激戦地になってしまったんですよ。

 当時は秋葉原で食玩専門店もやっておったんですけども、1カ月に多い月は5000万ぐらい上がってたんじゃないですかね。1個がわずか150円とか200~300円のフィギュアでね。

 食玩は、コンビニとか日本中のありとあらゆるところで売ってたんですが、オタクのお客さんは、わざわざ海洋堂に買いに来る。巡礼者が聖地で買うようなもんですな。
秋葉原では、ウチに来たついでにほかの店に行けば何でも買えますし、やっぱりなにかしらオタクを惹き付けるもんがあったんでしょうね。

(※注1)ラジオ会館:JR秋葉原駅・電気街口駅前のビル。1962年開業。オーディオや家電の集合店として始まり、70年代には黎明期のパソコンメーカーのショールームが集中。現在はフィギュアショップなどオタク系の店が大多数を占める。
(※注2)アクションフィギュア:関節可動で塗装済み完成品のフィギュア。米国が発祥。これに対し、通常のフィギュアは可動部がなく組み立て・塗装が必要。
(※注3)ガレージキット:大手模型メーカー製品の質やラインナップに満足できないマニアによる、少数生産の模型キット。手作りの原型を、シリコンゴムで型取りし、樹脂で複製するものが代表的。80年代初頭の、海洋堂や岡田斗司夫氏率いる「ゼネラルプロダクツ」(「エヴァンゲリオン」を制作した「ガイナックス」の前身)の販売が嚆矢とされる。
(※注4)チョコエッグ:99年にフルタ製菓が発売した、オマケ付きチョコレートのシリーズ。オマケであるミニフィギュアの企画・製作・生産を海洋堂が担当、従来品とは比較にならない精巧な造形で、一大ブームを巻き起こした。オマケのラインナップは「日本の動物」で、非オタクの一般人も惹き付けた。
(※注5)食玩:食品玩具の略。菓子や飲料などに付属するミニフィギュアなどのオマケ玩具。実際はほとんどの場合、オマケのほうが主である。海洋堂は多数の食品・玩具メーカーと提携、数千種に及ぶフィギュアを提供した。
(※注6)イエローサブマリン、ボークス、コトブキヤ:いずれも人気のフィギュアメーカー、トイ系ショップ。

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