◇秋場所<9日目>
(20日・両国国技館)
横綱白鵬(25)=宮城野部屋=は初顔合わせの徳瀬川を左上手投げで退け、56連勝とした。安美錦の右上手投げに敗れた大関琴欧洲に土がつき、白鵬は9戦全勝で単独トップ。把瑠都は大関同士の一戦で魁皇(38)=友綱部屋=に送り出されて2敗目。かど番で苦しい土俵が続く魁皇は5勝目を挙げ、白星を先行させた。大関日馬富士は関脇栃煌山に押し倒されて3連敗で4敗目。栃煌山は7勝目。十両は豊ノ島が9戦全勝で単独首位を守った。
大記録を紡ぎ続ける横綱が、余裕しゃくしゃくで単独トップに立った。並走していた全勝の琴欧洲が敗れた後に、初顔の徳瀬川を上手投げで下し、連勝を56に伸ばすと同時に優勝争いでも当然のように首位に躍り出た。
不知火型土俵入り横綱の大先輩に並ぶ白星だ。56連勝は大正時代に22代横綱太刀山が、3場所の全休や引き分けなどを含みながら築いた数字。太刀山は白鵬が抜くまで不知火型最多の9度の優勝を誇った名横綱だ。制度が違う現在と比較はできないが「同じ不知火ですからね」と、連勝で並んだことを静かに喜んだ。
取組も太刀山にささげるような内容。終わった5日目に続き「呼び戻し」にチャレンジ。呼び戻しは太刀山も得意にしており、「仏壇返し」の異名は、太刀山の豪快な技から来ているとも言われる。今回も不発に終わったが、最後は53連勝の千代の富士の「ウルフスペシャル」を思わせる、相手の首を押さえ付けた豪快な上手投げを決めた。
単独トップに立った優勝争いはもちろん、早くも今年の年間最多勝まで見えてきた。2位の把瑠都が2敗目を喫したことで、全勝すれば2008年に続き2度目の秋場所での最多勝が確定する。さらに把瑠都の成績次第では、05年に朝青龍が決めた13日目を抜く最速確定になる可能性も。その最多勝も過去最高の86勝を記録した昨年を、早くも上回るペースだ。
しかし優勝争いを含む数々の話題も、偉大な連勝記録に挑む横綱にとっては、取るに足りないことのよう。「まあ頑張ります」と素っ気なく答えて国技館を後にした。 (田中一正)
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