◇秋場所<10日目>
(21日・両国国技館)
大関同士の一番は、琴欧洲(27)=佐渡ケ嶽部屋=が魁皇(38)=友綱部屋=を上手投げで下して9勝目を挙げた。かど番の魁皇は5勝5敗。横綱白鵬(25)=宮城野部屋=は新関脇の栃煌山を一方的に寄り切り、10戦全勝で単独首位を堅持し、連勝記録は57となった。栃煌山は7勝3敗。把瑠都は旭天鵬をつり出して勝ち越しを決め、日馬富士は徳瀬川を押し出し、連敗を3で止めて6勝4敗とした。全勝の白鵬を1敗の琴欧洲、2敗の把瑠都と平幕の嘉風、豪風が追う展開。十両は豊ノ島が10連勝で単独トップ。
まるで魁皇のお株を奪う攻め。琴欧洲は右上手をがっちり引くとぐいぐい前に出た。土俵中央で魁皇にかぶさるようにして強烈な上手投げ。魁皇ファンに悲鳴を上げさせた。容赦ない攻めだった。
支度部屋に戻ってくると、自然に笑みがこぼれた。「右上手を取って出ようと思いました」という。魁皇がいくら力が衰えたとはいえ、相四つで勝負しようと思うのは、気力が充実している証拠だ。「魁皇関が力を出す前に攻めようと思った」。前日、安美錦の上手投げに全勝をストップさせられたが、そのショックはなかった。
気持ちの切り替えのために、前夜は若い衆を誘って食事に出かけた。「ステーキを食べた。いっぱい? 若い衆じゃないんだから、そうは食えないよ」と笑った。
今場所も賜杯レースは横綱白鵬が突っ走る。大関としては千秋楽まで優勝を決めさせないことが最低限の仕事。放駒理事長(元大関魁傑)は「琴欧洲には1敗のままついていってほしい」と期待する。白鵬の連勝が伸びれば、琴欧洲との対戦がいよいよ楽しみになってくる。白鵬の連勝ストップを聞かれた琴欧洲は「それは関係ない」と素っ気なく言った。もっとも琴欧洲も人の子、「(優勝を)考えないといったのはウソ。できるだけ考えたくないんだ」と言い直した。
野球賭博で兄弟子の琴光喜が解雇され、佐渡ケ嶽親方(元関脇琴ノ若)も降格処分を受けるなど、部屋のムードは明るいとは言えない。2年以上優勝から遠ざかっている琴欧洲が存在感をアピールできれば、部屋も明るくなるし、大相撲も面白くなる。 (近藤昭和)
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