内山、史上初の王座奪取から３連続ＫＯ！６連打で失神病院送り！…ＷＢＡ世界Ｓフェザー級戦

４回、内山（右）の右フックがムクリスの顔面をとらえる

　◆報知新聞社後援　プロボクシング・ダブル世界戦　▽ＷＢＡ世界スーパーフェザー級タイトルマッチ　○内山高志（５回２分２７秒　ＴＫＯ）ロイ・ムクリス●（２０日、埼玉・さいたまコミュニティアリーナ）　「ＫＯダイナマイト」がまた大爆発だ。ＷＢＡ世界スーパーフェザー級王者・内山高志（３０）＝ワタナベ＝が、日本人世界王者初の快挙となる王座奪取からの３連続ＫＯで、２度目の防衛を飾った。５回に世界初挑戦の挑戦者ロイ・ムクリス（２３）＝インドネシア＝を強烈な右フックで捕らえ、連打でダウンを奪い、２分２７秒ＴＫＯでリングに沈めた。内山は無傷の１６戦全勝（１３ＫＯ）、ムクリスは２３勝（１８ＫＯ）３敗２分け。

　強過ぎるにもほどがある。５回２分過ぎ、内山は左ボディーを１発入れると、間髪入れずに強烈な右フックでムクリスのほおをとらえた。「効いてる」。相手が棒立ちになった瞬間、顔面にめがけて左フックから連打。挑戦者は失神ダウンで立ち上がれず、２分２７秒、レフェリーが試合を止めた。

　セミファイナルの世界戦で同門の河野公平が敗れ、会場に漂った嫌な空気を剛腕で吹き飛ばした内山は「初防衛も今回も一緒。勝ててホッとしている。今はのんびりコーヒーでも飲みたいっす」と傷一つない顔で笑った。一方、病院送りとなったムクリスは、２か月前にマネジャーを亡くしたばかり。傷心の陣営に「試合の準備をしてくれたことに感謝します」と気遣う余裕を見せた。

　満点の内容だ。初の世界戦で硬さが目立つ２３歳の挑戦者に、序盤から攻勢に出た。相手の高いガードでがら空きのボディーに右強打を再三、見舞った。ガードが緩めばフェイントを入れて顔面をとらえた。５回前のインターバル中、４回の模様を再生する会場の大型モニターで自分の動作を確認する冷静さもあった。

　数々のＫＯ劇を生んだ拳は“特異体質”。ナックルは右人さし指と中指の部分だけ飛び出るように１センチ近く隆起。だが実戦では、パンチが当たる瞬間にナックル全体ではなく、この２点に力が集まり、相手に痛打を与える。拓大３年時に右中指の腱（けん）を切った影響もあるが「痛めては休んでの繰り返し」と、この日も氷で冷やした。日本人の王座奪取からの３連続ＫＯ勝利は史上初。さらに、この階級での２度の防衛は国内ジム所属選手では１９７４年の柴田国明（ヨネクラ）以来３６年ぶり。快挙ずくめにも「記録はたまたま」と照れた。

　海外へ羽ばたくチャンスが出てきた。指名試合となる来年１月予定のＶ３戦は暫定王者のホルヘ・ソリス（メキシコ）との王座統一戦が有力視される。交渉次第では入札に発展するため、敵地メキシコに乗り込んでの防衛戦の可能性が帯びる。

　「海外へ行くことになれば行きますよ。いつ世界の強豪からオファーが来ても、戦える練習はしてきた」。テクニシャンから瞬時に「ＫＯダイナマイト」に変身し、ボクシングの醍醐（だいご）味を演出した内山が「リアルチャンプ」の道を歩み始めた。

　◆内山　高志（うちやま・たかし）１９７９年１１月１０日、埼玉・春日部市出身。３０歳。花咲徳栄高１年でボクシングを始め、拓大に進学。４年時から全日本選手権３連覇。０２年国体優勝。０５年７月、プロデビュー。０７年９月、東洋太平洋スーパーフェザー級王座獲得（防衛５回）。今年１月にＷＢＡ世界スーパーフェザー級王座を奪取し、５月に初防衛に成功。１７２センチの右ボクサーファイター。独身。