魁皇「しがみついた」大関対決を制す！…秋場所９日目

魁皇（右）は把瑠都の突っ張りをかいくぐり、送り出しで辛勝。白星先行とした

　◆大相撲秋場所９日目　○魁皇（送り出し）把瑠都●（２０日・両国国技館）　カド番の大関・魁皇が驚異の粘りで窮地を脱した。把瑠都との今場所初の大関同士の対決を送り出しで制覇。負ければ進退の危機に立たされたが５勝４敗と白星が先行し最大のピンチを切り抜けた。横綱・白鵬は東前頭４枚目の徳瀬川を破り第２２代横綱の太刀山が１９１６年５月に記録した５６連勝に並んだ。大関・琴欧洲が敗れ１敗となり優勝争いで単独トップに立った。

　鬼の形相で魁皇が土俵際で残った。把瑠都のもろ手突きで両足が俵にかかる。「とにかく必死だった」。勝利と現役への執念が３８歳を突き動かした。右に回り込むと必殺の右上手で回しを取った。

　「つかむというよりしがみついた感じだった」命綱となった右上手で一気に出し投げを打つ。１９８センチ、１８８キロの巨体を泳がせると後ろに回って送り出しだ。進退の窮地に陥った大関が見せた必死の相撲に館内は歓声と興奮が渦巻いた。「自分でもよく残れたと思う。とにかく、攻める、それ以外のことは考えない」。最大の危機を脱した白星は、攻めの姿勢を忘れなかった執念の結晶だった。

　１３度目のカド番で迎えた今場所。初日の１週間前だった。普段は、電話をあまりかけてこない父親の古賀誠二さん（６８）からメッセージがあった。「悲そう感を感じることなく思い切って取りなさい。あとは結果が出れば自分で判断すればいい。とにかくやるだけやりなさい」。父の激励に短く「分かっているから」と答えたという。

　誠二さんは明かす。「心配はけがだけ。あとは本人が思うように取ればそれでいいんです」。父の気持ちを魁皇も分かっている。「一日一日をしっかり取るだけ」。悔いだけを残さず戦うだけだ。

　場所中に痛めた右ひざはこの日も場所入り前に針を打った。過酷な状況は続くが師匠の友綱親方（元関脇・魁輝）は「今日のような気持ちがあればまだがんばれる」と背中を押した。連日、すさまじい声援が３８歳の背中に降り注ぐ。「そういう多くの声があることをしっかり頭に入れて相撲を取る」。支えてくれるすべての人への感謝を力に残り６日間、気力を振り絞る。