米国の州立大学が新卒学生を採用する米企業の注目を集めている。州立大学は学生数が多く実践的な技能の教育に注力していることから企業にとっては一層の人材採用コスト削減につながるためだ。
ウォール・ストリート・ジャーナルが、昨年4万3000人の新卒学生を採用した企業の採用担当責任者らを対象に行った調査で明らかになった。この調査での上位3校は学生数の多い、ペンシルベニア州立大学とテキサスA&M大学、イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校だった。
人材採用担当者らは優秀な公立大学の卒業生は学業面も優秀でバランスがとれているケースが多いと話しているほか、企業はこうした学生は企業文化に溶け込みやすいようで、長期的にも良い実績を残しているという。
さらに企業は、インターンシップの提供や実際に採用する際も有利な立場に立てることから、大学の教授陣や学生らとの協力や提携が可能な大学を好む傾向がある。
企業の予算削減も背景となっている。大学の学生就職支援担当者と企業の採用担当者らからなる全米大学および雇用者協会(NACE)によると、人材採用担当者の給与と出張費用、広告ならびに転勤費用を合わせると、100人の学生を採用するために50万ドル以上かかる。コンサルティング会社デロイトの学生採用担当リーダーのダイアン・ボハニ氏は「われわれも皆、業績に対して責任がある」と述べ、同氏は採用する大学数を従来の500校から400校へと減らした。
学生に与える影響も大きい。複合企業の米GEで学生採用責任者を務めるスティーブ・カネール氏は、どの大学に進学するかを決定する前に学生が、その大学でどの企業が採用活動を行っているかを知ることは非常に重要だと話す。例えば、GEは2200人の夏のインターン採用のため、およそ40の主要校に絞り込んでいるが、そのほとんどは州立大学。同氏によると新規採用の80%以上はこうしたインターンシップ経験者で占められているという。
今回の調査では、企業はアイビーリーグのハーバード大学などのエリート校の学生も採用しているが、企業がアイビーリーグ校を上位に挙げるケースは少ない。
今回の調査で中心的役割を果たしたハーバード大学のクローディア・ゴールディン経済教授は「わが校には、いろんな業種でつぶしのきくような基本的なありきたりのクラスはない」と述べた。さらに最近の調査によると、同校の55%以上の卒業生が博士課程に進むために、最初の仕事には短期間(しばしば1年もしくはそれ未満)しかとどまらない傾向があると指摘した。また、こうした傾向には、学生数が少ないことも影響しているという。
特定の企業が特定の大学を特別に好み、近くに事務所まで設置することもある。インターネット検索最大手の米グーグルが2006年9月にミシガン州アナーバーに販売・営業拠点を設置を決定した際の大きな理由は今回の調査で7位にランクされたミシガン大学の存在だった。