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米国ホワイトカラー世帯の受難-親の収入減の影響を受ける子供たち

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 【コネチカット州フェアフィールド】GEキャピタルの取締役として高額報酬を得ていたモーリス・ジョンソンさんが解雇されたのは1年前。そのとき真っ先に脳裏に浮かんだ心配事は、自分ではなく、子供たちの将来だった。

ジョンソン家 Katie Orlinsky for The Wall Street Journal

ジョンソン家の所得はかつての5分の1にまで減った

 ジョンソン家の所得はかつての5分の1にまで減った。影響は子供たちにも及びつつある。上の二人の娘は、ジョンソン夫妻の母校でもあるジョンズ・ホプキンス大学の学生だ。年間授業料に1人5万ドル(約470万円)ずつかかる。15歳になる三女も最近大学探しを始めた。ジョンソンさんは、三女の進学どころか、上の二人の娘も卒業させてやれるか分からない状況だ。

 学士号を持たないエンジニアの父親の苦労を目の当たりにして育ったジョンソンさんは、自分の子供たちには高い教育を与えようと決めていた。

 「わたしたち夫婦は、子供が生まれた瞬間から狂ったようにお金を蓄えてきた。それがすべて無駄になってしまった」

 ジョンソン家のようなホワイトカラーのアッパーミドルクラス世帯の多くが、突然の転落という憂き目に遭っている。賃金削減、解雇、10年に及ぶ株式市場の低迷によって、多くの世帯では子供に十分な支援を与えることができなくなっている。

 一般的に、高度な訓練と教育を受けた労働者は、そうでない労働者より高い報酬を得る傾向にある。全体的な失業率が9.7%であるのに対して、大卒者の失業率は5%だ。雇用環境は改善に向かいつつある。3月の米雇用統計では雇用者数が16万2000人増となり、この3年で最大の上げ幅を記録した。

 だがそれでも、31週という平均失業期間は、1948年以来最長の水準だ。2010年3月の大卒失業者数の合計は、金融業などのホワイトカラー部門の大規模な雇用削減が響き、230万人となった。07年3月より145万人増加したことになる。

 長い目で見れば、親の支援が減ることで若年層は、大恐慌時の子供たちと同じように、金銭的なたくましさを身につけることになるだろう。だが短期的には、親の金銭的な支援がなくなれば、若年層は住宅の購入、進路の決定、結婚や出産などを先延ばしすることになりかねないとエコノミストは懸念する。

 米国勢調査局によると、昨年の25~29歳の住宅所有者の割合は37.3%。ピーク時の06年は42%だった。25歳以下の場合は、05年の26%から23.3%に減少し、全ての年代グループのなかで最も低い割合となった。

 従来の借り手からお金が借りられなくなった若者たちにとって頼みの綱であるはずの両親の懐も今では当てにならなくなってきている。法律情報サイト、ファインドロー・ドットコムが2月に実施した調査によると、18~34歳の若年層の22%が、住宅ローン、借り入れ、クレジットカードの申し込みを拒否されており、この割合は他の年代グループの2倍に相当する。

 その結果、多くの若者が家賃を節約するために、居住形態の変更も余儀なくされている。米非営利調査機関ピュー・リサーチ・センターの調査によると、若年層の約21%が、経済的理由で友人や親戚と同居している、あるいはその経験があると答えている。

 過去の不況では、家計を支えるために一度家庭に入った女性が再び働きに出ることが多かったと、プリンストン大学のキャサリン・ニューマン社会学教授は説明する。だが現在は、働き続ける女性が解雇されるパターンが増えているという。1990年の不況の前、米国女性の就業率は57.4%であったが、その後2年で110万人の女性が仕事に就いた。現在はその反対だ。07年の不況前は、女性の就業率が59.3%まで増えたが、同時に、260万人の女性が失業状態にあった。それ以降、就業者と失業者を合わせた女性の労働参加率は横ばいとなっている。

 退職を予定していた多くの親は、退職金の減少を補うために、その予定を先延ばししており、その結果、若年層が職に就けないという状況を生んでいる。実際に65歳以上の労働人口は、07年よりも50万人増加した。

 「親の世代は子供たちに自分たちより良い暮らしを望むことは無理だと悟ったようだ。だがせめて同水準の生活は送って欲しいと思っている」とニューマン教授は語る。

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日本版コラム〔9月22日更新〕