突発的思い付き短編
シンジのススメ外伝
その頃のアスカさんと綾波さん
「で、さ。相談なんだけど」
「なに・・・・?」
「クェ?」
少女達の陰謀は湯煙の中で・・・密かに進む。
「シンジのバカはいっつもあの調子なんでしょ?」
「碇君は馬鹿じゃないわ」
湯船に浸かりながら話し始めるが、いきなり遮られる。
「はいはい、悪かったわよ。で、シンジはいつもあんな風に誰にでも優しいじゃない?」
「ええ、碇君は優しい・・・」
「そこが問題なのよ」
「・・・何故?」
ヤッパわかんないか、という顔で
「シンジはだれにでも優しい、これはいいわね?」
こく、と頷く。
「シンジがさ、他の人に優しくする。で、その人が女性だったりしたら勘違いしちゃうかもしれないじゃない?」
勘違い?
わからない、といった顔で首をかしげるレイ。
「ん〜もう。いい?レイ、あんたシンジに優しくされたら嬉しい?嬉しくない?どっち?」
湯船で暖まり血色よく染まった頬が、更に染まり、
「・・・嬉しい」
「もっと優しくしてもらいたい、とか思ったりするでしょ?」
こくこく
「中には『ああ、こんなに優しいのは私が好きだからに違いないわ』なんて思っちゃう女もいるかもしれないでしょ」
「・・・それは・・・いや」
「ね?下手したらシンジってばそのまんま告白されてお付き合いって事にもなりかねないわ!」
そこで、よ
「シンジに好きだって言い寄ってくる女がいちゃ、アタシ達はお互いに都合が悪いわけよ。でね?シンジの気持ちは置いとくとして、先ずは他の女が寄って来ないようにしとくのよ」
「・・・どうすればいいの?」
ふふん、と胸を張り。
「それを今から考えるんじゃない!」
考えてなかったのか。
湯船から出て、並んで身体を洗いつつ話を続ける。
「いい?あいつだって男なんだから、その辺の女がちょっと誘惑掛けてきたらコロッといっちゃうかも知れないわ。だから」
「・・・そういう人が近寄らないようにすればいいのね。でもただ近づいて来た人に変なことしたら碇君怒らないかしら」
「違うわよ、何かするんじゃないの」
ふふふふ、と
「何したって無駄だって思わせりゃいいのよ!
こ〜んな美少女が二人して傍に居ればちょっとやそっとの輩はちょっかい掛けようとは思わないはずよ」
そうなの?わからない、とまた口に出さずに表情で伝える。
伝わるアスカもアスカだが。
「あ〜んもう。とにかくそういうことなの!シンジの傍にずっと居ればいいのよ!人目に付くところでは特にね!」
アタシかあんたがね、と。
「で、シンジはアタシ達のモンだってことをわかりやすく行動で示すの」
「・・・人をモノ扱いするのは碇君が嫌うわ」
む、確かに。と思い直し
「シンジはアタシ達専用のパートナーだってことをよ!」
そのためにも身体に磨きを掛けなきゃね
「隅々まで綺麗にしとくのよ!他の女が一目であきらめるような女になってりゃ更にうまくいくんだから」
ええ、わかってるわ、と石鹸を使って洗髪を始めるレイ。
「・・・あんたは・・・。今言ったところでしょ!綺麗になんなきゃいけないって!」
「・・・なに?」
頭の泡をシャワーで無理矢理洗い流させ、
「いい歳した若い娘が!石鹸で頭洗ってるんじゃないわよ!ちゃんとシャンプー使いなさいってば!」
といいつつ、シャンプーを手に取り泡立ててレイの頭に付ける。
「・・・いたい」
「うるさいわね!ちょっと黙ってなさいよ。何このゴワゴワの髪!指も通んないじゃない。あんたちっとも手入れしてないでしょ!」
してないであろう。誰も教えなかったのだから。
「シャンプーで洗うときは先ず水洗いして簡単に汚れを落として!んで泡立てたシャンプーをつけて洗う。一緒に頭皮もマッサージして毛穴まで綺麗にするの!で、今度はリンス。これで髪のpHを弱酸性に戻すの。で、最後にトリートメント。これで髪に栄養を与えるわけ」
などと薀蓄を口にしながらレイの頭を洗い続ける。
「はい出来上がり。綺麗なモンじゃない、あんたの髪も」
ツルツルとした感触になった自分の髪に触れ、レイが驚きの表情に変わる。
「・・・あ、りがとう」
「ま、ね。これくらいは当然でしょ。共同戦線張るんだからあんたもキチッとしといてくれないと困るのよ」
「はい、ドライヤー」
脱衣所に備え付けのドレッサーで髪を乾かすように促すと、
「・・・なに?」
「なにって・・・あんたもしかしてドライヤーで髪乾かしたことないってンじゃないでしょうね」
「知らないわ。必要ないもの」
本当に知らないのであろう。
が、アスカにとってそんな事は関係がない。計画倒れになってしまっては困るからだ。
「あんたねぇ、女の子の基本ってモンを知らな過ぎるわ。あたしがきっちり教育してあげるから覚悟しなさい!」
ゆっくり向き直ってアスカを見つめるレイ。
「それは必要なこと?」
胸をそらしながら
「あったり前でしょ!シンジが他の子に目ぇむけないようにね!」
「なら、やるわ」
と、ドライヤーで乾かし始める。
「ああもう!そんなに近くからやったら痛むでしょ!先ずはタオルドライ、きっちりタオルで水分とってから。」
叩くように髪をタオルではさみこんで水分をふき取る。
「んで、こう遠くから温風で乾かして」
髪の間に温風を送り込む。
「半乾きになったら今度は冷風に切り替えて仕上げるのよ」
そう言って髪に指を通し軽く整える。
ん〜ここまでやったら最後までやっときますかと
「で、あとは何でもいいわ。もう寝るだけだから髪を保護してくれる整髪料でも付けとけばいいわ、今日は私の貸したげるから」
また今度お買い物にでも行って買い込みましょ、と。
仕上がった自分の髪の感触が信じられないのかレイはずっと髪をなでている。
「どう?ちょっと手ぇかけりゃ地がいいんだから・・・」
う、マジで可愛いわねコイツ
共闘はいいけどこっちまで食われちゃった、なんて笑えないわ。
でも足引っ張ったって同じだし。
・・・地力を付けろって事ね、頑張んなきゃ。
綺麗な髪
私の髪
いつもはゴワゴワぱさぱさしていたのに
指を絡めてもするっと戻る
こんなのは初めて
お風呂に誰かと入るなんて事あまりないから知ることもなかった
ありがとうアスカ
碇君は好きになってくれるかしら
それが心配
それだけが
心配
さて!今日から計画開始よ。
ずるずる
わかってるわねレイ、あいつが一人でドッカに行こうとしてもちゃんとついてくのよ?
ずずずず
・・・ええ、わかってるわ。
ちゅる
しかし美味しいわねこのラーメンっての
ずずずず
・・・ええ、碇君の作ってくれるのは何でも美味しい
ちゅるる
「おかわり」
「・・・私も・・・」
「うん、どんどん食べてね」
ちゅるっ
・・・・
ずるるるるる
。。。。
ずずずずず
こと。
「「ごちそうさまでした」」
「はい、お粗末さまでした」
「ねぇ、今日はネルフに行く用事無いんだけどさ、リツコさんたちにこれ、持って行ってあげようかと思うんだけど」
なんですって?そんなもったいない。私がきっちり明日も食べるわよ。
「え〜、明日も食べればいいじゃない」
こくこく
「明日だと味が変わっちゃうんだ。今日中に食べちゃわないとね」
意外と凝り性ね、むぅ。そんなだったらこんなに作んなきゃいいのに。
「これくらい作らないとこの味は出ないんだよ」
ま、まあ私達のためにわざわざこんなに作ってくれるんだから見込みあるわよね?
「ま、そういうことならしょうがないわね。さすがにそう何杯も食べれないし」
・・・もうちょっと食っとけば良かったわ。
「じゃ、行って来るね」
駄目よ!レイ、行くわよ
「あん、もう。待ちなさいよ、あたしたちも行くってば」
ええ、碇君と一緒に・・・
「そう?じゃあ一緒に行こうか」
頑張るわよ!わかってんの?レイ!
・・・ええ、わかってるわ。
・・・イマイチ不安なのよねぇ
外伝四 了