危ういところを助けられるお姫様と騎士様って感じィ?

ああ〜女の夢よねぇ。

ちゃんと本部に任官して正式配備の段取りが済んだら・・・

中学生よね?調べればすぐわかるわよね。

加持さんに手伝ってもらう事一件追加っと。

うふふ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シンジのススメ

第拾五話

 

 

 

 

 

 

 

 

 激しい騒音が耳を叩く。

新小田原の港に向かうネルフ所属の重輸送ヘリ、Mil26ヘイローである。

その搭載能力は通常で20000kg、有名なC130ハーキュリーズ輸送機で34170Kgであるからそのヘリにしては異常な積載能力がわかるであろう。

過去には56,768.8kgを積載し2000mの高度まで上昇したと言う当時の世界記録を樹立した事もある。

今回の搭載物は人員、パイロット2名、乗客14名と、ネルフ謹製エヴァ専用特殊電源である。

 

「リツコさん、なんで港で待たないんですか?」

「ん?ああ、空母は沖で待機するからよ。入港は輸送船だけ。で、その電源は空母に一旦接続しないといけないのよ」

「ねぇリツコォ、空母が入れる新横須賀港でも良かったんじゃないのぉ?」

「そうすると国連軍の敷地内での受け取りになるわよ?ミサト肩身狭いの嫌いでしょ?」

それに、と

「さすがに新横須賀からだと電源持たないわ」

 

 


 

 

新小田原沖、オーバーザレインボー。

紅茶色の髪を海風になびかせて、レモンイエローのワンピースを身に纏う少女が

「やぁっと来たわねぇ。さーて一発がつんとかますわよぉ!」

と腕を胸の前で組んで立つ。

息抜きしまくって元気いっぱいであるセカンドチルドレン、惣流 アスカ ラングレーである。

 

 

 

キュンキュンキュン・・・

ヘリが着艦し、颯爽と降り立つ白衣の女性とその随伴作業員総勢10名。

艦長と思しき将校がやってきて出迎える。

敬礼をし

「特務機関ネルフ所属 赤木リツコ技術三佐以下総勢16名。乗艦の許可をお願いします」

「許可する。ようこそオーバーザレインボーへ」

 

 

「さ、すぐ始めてちょうだい。私は艦隊司令に引渡しの挨拶してくるわ。マヤ、任せるわよ」

「はい!先輩」

 

 

艦橋に向かうリツコとミサト。

「あら、あの二人は?」

「レイがヘリ酔いだってさぁ。シンちゃんが介抱してるわヨン」

 そこに、

「HELLO Misato!Wie Geht’s Ihnen?(調子はどう?)」

と、声をかけながら現れるアスカ。

「Gut,danke,und Ihnen?(元気よ。あんがと。あなたは?)ってアスカぁ、日本語覚えたんじゃないの?」

「ま、ね。ミサトがドイツ語忘れてないか試しただけよ」

いっじわるねぇ、と苦笑い。

「で?ファーストとサードはどこ?」

すっと前に出てリツコが言う。

「彼らならもうじき降りてくるわ。レイがヘリに酔っちゃったのよ」

貧弱ねぇ、と口に出して、リツコの顔を凝視する。

「あ、あああああ。も、もしかして赤木リツコ博士?」

「ええ、初めまして。赤木リツコ技術三佐よ。今後よろしくね?」

と言いつつ右手を差し出す。

「そそそ、惣流 アスカ ラングレーです!よろしくお願いします!」

握手をしながらも、緊張が目に見えてわかる。

「ん〜?どったのアスカぁ。急にぃ」

んなっ!と驚きの顔で

「なに言ってんのよ。世界中の研究者の頂点とも言える赤木リツコ博士よ?わかってんの?ミサトはネルフから出たらただの軍人だけど、赤木博士はどこに出しても超一級のVIPよ?」

「・・・そうなの?」

「そうらしいわね」

涼しい顔で応えるリツコ。慣れているようだ。

 

「すいませ〜んリツコさん。もう落ち着いたみたいです」

まだ多少ふらつくレイを連れてシンジが駆け寄る。

「なぁ〜〜〜〜〜!?」

「あれ?このあいだの」

「だぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜」

二人の首を抱え込んで

「あ、あんときはちょっとお忍びで来てたのよ。内緒で、お願い」

「りょ、了解」

「・・・わかったわ」

「首、離してくれる?」

はっとして慌てて手を離す。

真っ赤になりながら

「そ、惣流 アスカ ラングレーよ、よろしくね。えーと」

とミサトを見る。

「ああ、こっちがサードの碇シンジ君。んでこっちがファーストの綾波レイ。三人とも仲良くしてねン」

「よろしくね。惣流さん」

「・・・よろしく。惣流さん」

ん〜と、眉間にしわを寄せ言う。

「いいわ、あんたたち。アタシのことはアスカって呼んで。アタシもシンジ、レイって呼ぶから」

こないだのこともあるし、いいでしょ?と。

そうだね、と頷きあう二人。

「じゃ、よろしくねアスカさん」

ちっが〜う、アスカ、よ。と更に言う。

「・・・よろしく、アスカ」

「よろしく、ア、アスカ」

そ、それでいいのよ!と耳まで真っ赤にしながらそれでも照れてるのを認めない風で。

「さ、艦橋まで案内するわ。行きましょ!」

 

  


 

 

「以上、外部電源の概略です」

「ふむ、わかった」

凛々しく書類の束を艦隊司令に手渡すリツコ。

「では引渡しのサインを」

「ああ、しかし高名な赤木リツコ博士直々の引取とはな。多少ごねてやろうと思っていたんだがな」

こっちが悪者になっちまうな。はっはっは

と悪びれずにサインをし、弐号機の詳細を記したデータディスクを艦長席後ろの金庫から取り出し、併せて渡す。

「では、外部電源が艦のリアクターに接続完了次第、弐号機の起動を行います」

「了解だ、じゃあな、嬢ちゃん。しっかりやんな。また遊びにでもおいで」

司令がそうアスカに言うと、艦長が

「艦をオセローに寄せろ」

と指示を出す。

と、そこへ

「よっ、葛城、りっちゃん、久しぶり!」

「あら、りょうちゃん。元気だった?」

「か、加持・・・」

加持リョウジ

葛城ミサトの以前の恋人であり、赤木リツコとの共通の友人でも有る。

事前に居ると聞いていたおかげで、あまりうろたえる事はなかったがそれでもヤハリ気にはなる。

「加持一尉、艦橋への入室は許可しとらんぞ」

艦長がたしなめる。

「こりゃ失礼、出直します」

と、まわれ右。

「では、私どもは作業場に向かいます」

「ああ、退室を許可する」

 

 

 


 

 

「じゃ、ミサト?作業終るまで子供たちをお願いね?」

私は作業を見てくるから、と言い残し去っていく。

 

「で、かぁじぃ?」

「な、どうした葛城。なにかあったのか?」

空母内食堂にて子供たちと5人、時間を潰している。

そこで、思い出したかのようにミサトが口を開いたのだ。

「あんた、アスカのガードほったらかしてどこに行ってたのよ」

「ん?あ、ああ。ちょいと野暮用でね。内緒だ」

「ぬわぁにが野暮用よ!あんたがしっかり付いとかないからアスカはロストする、そのとばっちりがこっちに来る、リツコにどんだけ言葉イジメされたかぁ・・・・」

あああああと嘆きつつ加持を締め上げる。

 

「・・・葛城一尉、うるさい」

「ま、しょうがないよ。久々の再会だってリツコさんも言ってたし。怒ってるのも照れ隠しなんじゃない?」

「へぇ、そうなんだ。(やっぱりねぇ)」

「振ったんだか振られたんだかまでは聞いてないんだけど」

あの部屋の状況知るとねぇ・・・と言葉を濁す。

「部屋?ミサトの?」

「・・・ゴミの、いえ、部屋がゴミ」

 

そう、今日の出発時に、リツコさんの

「どうせ遅刻されて待ちぼうけるくらいなら起こして引っ張って行った方が精神衛生上まだマシだわ」

と言う意見により葛城邸を訪れた三人。

扉を開けた瞬間そのことを後悔したのだった。

「・・・昔に輪をかけてひどいわね・・・」

「昔もこんなだったんだ・・・」

「ゴミ・・・夢の島・・・夢は現実の続き・・・現実は夢の終り・・・」

「あ、綾波ィしっかりして!」

異臭と目の前の現実とで精神が飛んでしまった様である。

ぴっぴっぴっ、とリツコが携帯で何処かへ連絡をとる。

「・・・ええ、赤木です。部長権限で第3種第4項を適用します。直ちに葛城ミサトのマンションへ。ええ、手段は問いません」

ぴっ。

「り、リツコさん?いまのは?」

んフフフフフ。こう言うのはモトから絶たないとね、と口の中で呟くリツコ。

十数分後。

バイオハザード対策を施した対ケミカルスーツを装着した技術部危険物処理班が到着。

収容した危険物をその場で焼却処分する、プラズマ溶解炉搭載のトレーラーで出張してきた。

部屋の中から外に運び出され、通路から外に泊まっている処理車へシューターで直送。

手際よく部屋の危険物を処理していく。

「あ・・・」

「・・・とり?」

生きているのか死んでいるのかリビングの片隅でぐったりとしているモノを見つける。

「・・・ミサトが引き取った温泉ペンギンじゃない・・・きちんと世話するからって預けたのに・・・こんな姿に・・・」

悲しげに見つめるリツコにレイが

「・・・まだ生きてる・・・」

早急にリツコ懇意の動物病院(猫つながり)へと運ばれた。

どうやら極寒の南極でも何十日も食事を摂らないで生きる事が出来るペンギンの性質が幸いし、なんとか持ったのだろう。

で、当のミサトは、と言うと。

本部の仮眠室を最近のネグラにしていたのだった。

 

閑話休題

 

「へぇ〜、ミサトがそんなだったとはねぇ」

「・・・ゴミ・・嫌・・・」

ぶるっと震えるレイ。

ある意味、人類の暗部を見た思いであろう。

「あの二人ほっといてさ、アタシの弐号機見に行かない?」

「そうだね、ここでこうしててもしょうがないし」

こくこく

「んじゃ決定ね」

 

 

ドイツ以来、連絡機となっているヘリ、EC145でオセローに、と思ったらもうすでに空母が横付けされている。

「あら、あなた達。今呼びに行かせる所だったのよ。ちょうど良いわ、アスカ、弐号機を起動してこっちに乗ってきて頂戴」

「おっけー」

と駆け出す。

 

「リツコさん、これ、エヴァの外部電源ですよね?」

「ええそうよ。試作1号機だけどね」

「ケーブルじゃないんですか・・・」

空母からのケーブルは有るがそこ以外は外部に伸びる部分はない。

「バッテリーなんですか?」

「ええ、普通の科学反応を利用したバッテリーじゃなくて。

この中で2枚の円盤が逆方向に回転してるの。

ジャイロ効果を打ち消すためにね。

モーターを回すためには電気を流すでしょう?

その逆に、電気を発生させるには、モーターのコイルの方を動かせば良い。

要するに、これに電力を供給することにより、このケーシング部のコイルによって内部に有る磁石円盤が超高速で回転し始めるの。

エヴァの技術を応用して作られたな複合カーボンナノチューブハニカムチタン製のフレーム素材で作られた円盤が毎秒3万回転しているの。そこから電力供給を行なうのよ」

それによって獲られる稼動時間の延長は約1時間!

「凄いでしょう。でも難点がひとつ有ってね」

「なんですか?」

「中を真空にして抵抗を少なくして、非接触型ベアリングでこれまた抵抗を減らしているの。おまけに超伝導素材のために液体窒素を封入してるから、格闘戦に移行して、ひびでも入ったら確実に止まっちゃうの」

「・・・実戦には使えませんね」

「ええ。だから緊急時の展開用に、と思って頂戴。本当はS2機関が出来れば良いんだけど」

あれはねぇ、と言いつつ溜息をつく。

「S2機関ってスーパーソレノイドドライブって奴ですよね。葛城博士が概念を提唱した」

「ええ、よく知ってるわね。あれは確かに画期的なんだけど・・・」

ちょっとね、とまた言葉を濁す。

「何か問題でも?」

「ん、シンジ君だから言うけど、理論自体は実現可能なの。間違いなくね。

ただ、実際作って稼動させるのに恐ろしいほどのチェック項目が発生するのよ。

で、その1つでもミスすると、無限のエネルギーが逆流するの」

・・・

「核の非じゃ有りませんね・・・」

「ま、今どうこう言っても始まらないわ。さ、アスカが来るわよ」

 

超高速回転する円盤を内蔵するフライホイールバッテリーを背中に背負う。すると背部電源部に自動的にソケットがはまる。

『Woooo!赤木博士!稼動時間が1時間12分になったわ!』

「了解。じゃ、またオセローに戻って作動停止。港に着岸して後再起動。第三新東京市に向かいます」

「了解!」

 

 

「なぁ葛城。そろそろ行かないと拙くないか?」

「うっさいわね!あんたがそんなだからあのときだって、あのときだって・・・」

だんだん涙声になってくる。

「あ、おい、か、葛城ぃ。こんなトコで、勘弁してくれよぉ」

 

 

 

「じゃ、お先にィ!」

と言って、リツコ達技術部員が乗りこんだMIL26を先導機にして移動を開始する。

一方シンジとレイは。

 

「・・・葛城一尉、遅い」

「・・・ほんとにね」

 

アスカ専用の足としてそのまま第三に出向するヘリ、EC145と共に、いつまでたっても痴話げんかの終わらない二人を待っていたのであった。

 

 

第拾五話  了

 

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