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米金融業界で働く女性が減少

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 米国の金融業界から女性の姿が消えつつある。

 米労働統計局のデータによると、この10年で金融業界の女性労働者全体の2.6%に相当する14万1000人が業界を去った。その間、男性労働者は38万9000人(9.6%)増えている。

イメージ Getty Images

 このシフトは、労働力全体の変化とは対照的だ。米労働市場で女性の数はこの10年間で4.1%増加し、男性の0.5%増を上回った。

 女性労働者の減少は、証券会社、投資銀行、資産運用会社などで顕著にみられる。

 数字から見えてくるのは、このところの景気低迷で女性が真っ先に解雇の対象となったという現実だ。ほかの労働力の台頭もある。補佐的なバックオフィス業務など、これまで女性が大半を占めてきた仕事をコンピュータが代わって処理するようになった。

 女性労働者の数は、株式と不動産が高騰していた01~06年の間も減少し続けていた。米ラトガース大学の教授で、米労働省で主席エコノミストを務めた経験もあるウィリアム・ロジャース氏は、テクノロジーが背景の1つと推測する。

 米国の銀行、ブローカー、保険会社などでは女性従業員が減り続けている。00年以降、金融業界で働く20~35歳の女性の数は、31万5000人(約16.5%)減少した。一方、同年代の男性労働者は9万3000人(7.3%)増加している。

 特に、大学を卒業したばかりの女性をはじめ、若い女性労働者の減少が著しい。20~24歳で金融業界入りする女性の数は、この10年間で21.8%減っている。同期間、ほかの業界で女性労働者の人数に変化はみられない。

 これは若い女性が、金融業界の初歩レベルの仕事に魅力を感じていないか、空いているポストに採用されていないかのいずれかを意味する。

 このところの不安定な市況と、報酬体制に対する監視の強化を踏まえると、すでに金融業界でキャリアを積むことを決定した女性にとっても、働き続ける動機を見いだしにくくなったとシカゴ大学のGrace Tsiang経済学教授は指摘する。

 同教授は、これらの女性は、仕事を続けるよりも出産・育児を選んでいると推論する。「女性は常に仕事か出産・育児かで迷い続けているため、強いプレッシャーにさらされながら働くことへの価値観が少しでも減退すれば、男性よりもはるかに高い確率で職場を去ることを決意する」

 このような構図は、1970年代から80年代前半にかけて金融業界入りした女性たちとは大きく異なっている。金融業界で働く55歳以上の女性の数は、99年以降36万6000人(56%)増加した。その間、同年代の男性労働者は23万4000人(34%)増にとどまっている。

 だが長く務めたからといって必ずしも昇進につながるわけではない。バンク・オブ・アメリカ(バンカメ)のグローバル資産運用・投資管理部門を統括するサリー・クロウチェック氏や、JPモルガン・チェースで国際業務を統括するハイディ・ミラー氏のように経営トップにまで上り詰める女性は、今でもごく一握りだ。

 米NPO法人カタリストが2010年に実施した調査によると、米国の金融機関の幹部職で女性が占める割合はわずか16.8%。最高経営責任者(CEO)にいたってはたった2.5%だ。

 ウォール街は、このようなジェンダー・シフトについては口が重い。JPモルガンやラザードなどの金融機関は、この点についての質問に答えなかった。回答した金融機関も、従業員の男女比について詳細は控えるとしている。

 バンカメだけが唯一、従業員の61%が女性であることを明らかにした。同行は米国内に約6000の支店を展開している。

 金融業界を去った女性からは、女性の離職者が増えた理由は、ストレスやスキャンダルで、金融業界のキャリアの魅力が失われたことだという声も聞こえる。

 働く女性のネットワークグループ、「85 Broads」の創設者であるジャネット・ハンソン氏は、金融業界で働く女性が減少したのは「ウォール街が魅力的な場所でなくなったからではなく、ほかにもっと素晴らしい場所を見つけたから」と、女性の起業意識の高まりに言及している。

 プリンストン大学を卒業した06年にリーマン・ブラザースに入社したメーガン・ムンテアンさんは、「その頃、市場は好況に沸いていて、誰もがウォール街に職を求めた」と当時を振り返る。ムンテアンさんはリーマン破綻後もしばらく同社に残ったが、その後、女性向けの健康アドバイスや商品の販売を手がけるウェブサイトを立ち上げた。

 ムンテアンさんは、女性従業員は、男性上司とゴルフなどのつき合いをしなかったために給料が低かったと話す。「男性従業員と対等につき合おうとした女性もいたけれど、結局うまくいかなかった。60年代のようなあからさまなセクハラはなくなったが、完全に消えたわけではない」

 モニカ・マーフィーさんも、ウォール街を飛び出して、自ら事業を起こしたひとり。ゴールドマン・サックスを退職後、08年初めにハイヒール靴の保護カバーを作る会社を設立した。

 マーフィーさんは、女性従業員は男性よりも成功の定義を幅広くとらえていると語る。「女性に対して仕事だけでは不十分というプレッシャーがあるからだと思う。ワークライフ・バランスは、男性にとってはたいした問題ではないが、女性にとっては重要課題であり続ける」

 かつてほどあからさまではなくなったが、ウォール街には依然として性差別がはびこっている――多くの女性から聞いた言葉だ。米雇用機会均等委員会(EEOC)のデータによると、金融機関でのセクハラ訴訟は00~09年に28%減少している。だが業界の女性1人当たりの提訴件数は、景気が低迷した08年と09年に増加がみられた。

 15日にもゴールドマン・サックスを相手取り、元従業員の女性3人が性差別訴訟を起こしている。原告側は、ゴールドマンには女性差別の企業文化が根強く、女性が要職を占める割合も少ないと訴える。同社の女性幹部の割合は、バイスプレジデントが29%、マネージングディレクターが17%、パートナーが14%だ。ゴールドマンは訴えに根拠はないと主張している。

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日本版コラム〔9月22日更新〕