民主党代表選以降、各種世論調査で菅内閣の支持率が急上昇しています。この政権は、何の実績もあげていないどころか、基本的に無為無策そのものである上、しなくていいことばかりしてきました。しかもその間、菅直人首相は己の底の浅さ、無内容さと日和見ぶりを、これでもかというほど見せつけ、岡崎トミ子氏のような問題人物を入閣させもしたにもかかわらず、です。
ここから、どんな教訓を読み取ることができるでしょうか。
一つは、大方の人は、そもそも政府の施策に特に期待していないので、「何もしない」という姿勢は別に批判の対象にはならない、ということでしょうか。逆に、ときの政府が独自の、新しい施策を実行しようとすれば、メディアに揚げ足を取られたり、批判されたりして、かえって政府の印象を悪くするかもしれません。
また、もう一つは、とにかく小沢一郎前幹事長という「悪役」と対決姿勢をとれば、支持率も上がり、菅氏の地位も安泰になるということでしょう。小沢氏に対しては、一部熱心な信者・ファンがいるものの、国民の大多数は嫌悪感ないし忌避感を持っていることがはっきりしてきました。だから菅氏としては、できるだけ小沢氏を離党させずに党内にとどめ置き、何か国民の失望を買うような困った事態が生じたら、とりあえず小沢氏をたたいて見せたらいいのです。皮肉なことに、小沢氏が党を去ってしまえば、このカードは使えませんが。
小沢氏は今回、「勝てる戦いしかしない小沢さんが、初めて勝算のない勝負に打って出た」(小沢氏の盟友を名乗る議員)わけですが、その乾坤一擲の勝負に負けました。それだけ追い詰められていたのでしょうが、年齢的なこともあり、判断能力その他に相当ガタがきているなという印象も受けました。ここまで露骨に国民に「ノー」を突きつけられると、野党側もその小沢氏と手を組もうという政党・議員は少ないことだろうと思います。
小沢氏は「まだ死んでいない」(側近議員)のはその通りでしょうが、かなり政治的な死に近づいたかな、と思います。小沢氏はかつて、師匠の金丸信元副総理や竹下登元首相のことを、「後継者を育てなかった」と批判していましたが、金丸氏や竹下氏よりずっと自分の身を脅かす後継者が育つのを怖れ、遠ざけてきたのが小沢氏でした。周囲に人材がいないことが、小沢氏の耳に正しい情報や新しい知識が入ることを妨げ、こういう結果につながった気もします。
何より、よりによって菅氏なんかに負けたのは痛かったですね。かっこうわるい。
ともあれ、内閣支持率が6割を超えると、野党も国民の批判を怖れてその政権を攻撃しにくくなります。まあ、小沢氏の政治資金問題を追及する分には、遠慮はしないでしょうが。
代表選後、菅陣営の幹部の一人は「菅さんは本当に運がいい。菅さん自身が別にいい(候補である)わけじゃないのに」と率直に語っていました。今回の代表選は、「無能と無資格の戦い」(政治評論家の屋山太郎氏)といわれましたが、勝った「無能にして運のいい人」はこれから日本をどう導くのか。最高指揮官が運がいいことは、国民・国家にとってはもちろん望ましいことですが、その「幸運」が自分のためだけのものだったら…と少し背筋が寒くなる思いがします。
by fa-eng
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