2010年9月22日
高校無償化制度をめぐり、朝鮮学校に大阪府独自の補助金を支給することの是非を検討してきた府の専門家部会の提言の全容がわかった。北朝鮮指導者の個人崇拝を促すような教科書の記述の問題点を指摘するとともに、授業の改善を求めている。文部科学省の専門家会議が教科書を含む教育内容を無償化制度適用の判断材料にしなかったのに対して、府の提言は踏み込んだ内容になった。
府の専門家部会は、憲法や教育法に詳しい大学名誉教授を座長に、朝鮮語、教育学の専門家、府内の私立高校の校長の計4人で構成。22日午前の会議で提言をとりまとめた。同日中に公表する方針。
専門家部会の関係者によると、教科書をめぐる指摘は、(1)「敬愛する金正日(キム・ジョンイル)将軍様」などと国家指導者を賛美する現代朝鮮史や社会の教科書の記述について、「日本の教科書には特定の政治指導者に対する敬称は使われておらず、十分考慮することが望まれる」(2)現代朝鮮史の教科書では、大韓航空機爆破事件(1987年)を「韓国政府が捏造(ねつぞう)した」などとも記述。このため、現代朝鮮史の授業を「教科」としてではなく、北朝鮮社会についての理解を深めるためのカリキュラム外の「特別活動」として位置づける。また、異なる見解のある歴史的事象については両論を教える――など。
このほか、学習指導要領に定められた「家庭科」と「総合学習」の授業の開設▽教育内容について府民の理解を得られるよう日本語での授業計画の作成――などを求める。一方で、朝鮮学校の単位数や教員数などは、国の無償化制度に含まれることが決まっている高等専修学校の設置基準を満たす、と評価したという。
橋下徹知事は3月、朝鮮学校側に対し、府独自の補助金を出す条件として、在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)との金銭的、人的な関係を絶つ▽北朝鮮指導者の個人崇拝を促すような教育をしない、などを要望。朝鮮学校側の教育内容を調査するため、専門家部会を5月に発足させた。
府は専門家部会の提言を朝鮮学校側に伝えるとともに、高級学校(高校)の教室に掲げられた故・金日成(キム・イルソン)主席、金正日総書記親子の肖像画を外すことなどについても求める。ただ、朝鮮学校関係者の中には補助金を「人質」に取った橋下知事のやり方に反発する声もあり、同校側が府の条件をどこまで受け入れるかは不透明だ。