偽札、風船爆弾、生物兵器……旧日本陸軍の謀略技術がこの国を襲う
日本で暗躍する北朝鮮スパイは「陸軍中野学校」を手本にしている
(SAPIO 2010年8月25日号掲載) 2010年9月6日(月)配信
9月、気球に牛疫ウイルスを搭載する作戦計画が参謀本部で検討されたが、東条英機首相は「牛疫でアメリカの牛が全滅した場合、報復として我が国の稲が収穫期に全焼させられる恐れがある」として、細菌兵器の搭載は認めなかった。
自動高度保持装置を備えた世界初の「大陸間横断兵器」となった風船爆弾は、11月から半年間で9300個が放球され、約1000個が米本土に到着したと推定されている。風船爆弾による被害は軽微だったものの、アメリカ人を戦々恐々とさせるに十分だった。
研究所第3科が全力を注いだ偽札製造は、中国国民政府の「法幣(銀行券)」を偽造し、ドイツから最新式ザンメル印刷機を輸入して大量印刷を行なった。当時の日本の国家予算は200億円だったが、偽札は45億円相当が印刷され、中国での戦略物資購入の代金などに使われたという。
また、研究所第2科では、秘密通信用の特殊インキ、ライター型カメラ、マッチ箱カメラ、缶詰型爆弾、万年筆型毒針、消音ピストル、時限発火装置、尾行確認用小型バックミラーなどのスパイ道具を開発していた。
また、登戸研究所の技師は中野学校に出向き、出張講義も行なっていた。前述の映画『陸軍中野学校』シリーズ第3作目の『竜三号指令』には、登戸で作られたという「メガネの弦型ナイフ」や「靴底隠しナイフ」によって市川雷蔵扮する主人公の椎名次郎が危機を脱する場面がある。
金正日は中野学校を含めた旧日本軍のみならず、自衛隊も屈強の軍隊とみて恐れているという。そうした対日コンプレックスを持つ金正日であれば、中野学校と関係の深い登戸研究所の活動にも注目したはずである。
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