偽札、風船爆弾、生物兵器……旧日本陸軍の謀略技術がこの国を襲う
日本で暗躍する北朝鮮スパイは「陸軍中野学校」を手本にしている
(SAPIO 2010年8月25日号掲載) 2010年9月6日(月)配信
文=惠谷治(早稲田大学アジア研究機構客員教授)
日本人拉致、韓国要人暗殺、大韓航空機爆破……、そして韓国軍艦爆沈。どれも北朝鮮による謀略工作と認定されている。北朝鮮は、これらを実行する工作員の養成に力を注いでいるが、養成機関である金正日政治軍事大学では、意外にも旧日本陸軍の手法を使っているという。ジャーナリスト・惠谷治氏が北朝鮮諜報機関と旧日本軍の奇妙な関係をレポートする。
数々の謀略事件を引き起こしてきた北朝鮮。その謀略工作を35年間指揮してきたのは金正日である。1975年、謀略組織の実権を握った金正日は、朝鮮労働党主導の赤化統一のために「指導核心」工作員を養成しなければならないと強調、以来、金正日に忠誠を尽くす工作員を生み出してきた。
金正日が工作員養成の模範としていると思われるのが、旧日本軍の諜報員養成機関「陸軍中野学校」である。
盧溝橋事件をきっかけに日中戦争へと突入していく昭和12(1937)年、陸軍参謀本部第2部に謀略を専門とする第8課が新設された。そして、謀略・秘密戦を任務とする情報勤務要員養成所(防諜研究所)が東京・九段に設立され、昭和13年7月、予備士官学校の卒業生19名が1期生として入所した。
翌年3月に防諜研究所は東京・中野の電信隊跡地に移転、「後方勤務要員養成所」と改称され、8月に1期生が卒業した。昭和15年8月の「陸軍中野学校令」によって、後方勤務要員養成所は新たに「陸軍中野学校」と呼ばれるようになった。
中野学校については、昭和41(1966)年に映画化され『陸軍中野学校』という5本のシリーズが制作されている。金正日が中野学校に興味を持ったのも、この映画の影響によるものと思われる。
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