沖縄県・尖閣諸島付近での日本の海上保安庁巡視船と中国漁船の接触と、その後の海上保安官による漁船への乗船と船長の逮捕に対する中国政府の対応は尋常ではない。7日の事件発生以降、中国政府は日本の丹羽宇一郎駐中国大使を5回呼び出している。さらに、東シナ海での資源合意の履行に関する2カ国協議を中止し、予定されていた李建国常務委員会副委員長の訪日を延期した。しかし、同様に驚くべきことは、日本が引き下がる兆しを見せていない事実だ。
中国の執拗な反応は恐らく、日本とのあらゆる危機に付きまとう国内の憤怒を和らげることが目的だろう。そうであるなら、人々はいずれ冷静さを取り戻すだろう。しかし、尖閣(中国名:釣魚)諸島の領有をめぐり1990年、96年、2004年に発生したこれまでの危機と異なり、今回の危機は日中関係が危機的状況に陥る可能性があるなかで発生した。両国とも領有権の主張が重なる海における法の執行をこれほど積極的に行ったことはなかった。
中国政府は南シナ海で他国の漁船をだ捕する一方、米韓軍事演習に関連した米空母ジョージ・ワシントンの黄海への派遣に抗議している。09年に発生した米海軍の海洋調査船「インペカブル」が中国艦船に取り囲まれた事件の後、中国は領有権主張の拡大に歩調を合わせて、航行権の制限的解釈を推し進めている。
中国のこうした姿勢により、日本の変化が目立つことはなかった。日本は今や、領海の主張において、より活発に動く姿勢を示し始めている。日本の構造におけるあらゆる変化と同様、このシフトは緩やかだが着実に進んでいる。プロセスの始まりは99年にさかのぼる。日本を取り囲む海で中国のプレゼンスが飛躍的に拡大した年だ。太平洋へと抜ける日本の海峡を当初は中国政府の調査船、しかしすぐに中国海軍の艦隊や情報収集船が通過するようになった。
中国の活動はこれまでのところ、2地域に集中している。尖閣諸島と沖ノ鳥島の周辺だ。03年と04年、中国の潜水艦が日本の領海で目撃された。攻撃型原子力潜水艦が国際法に違反し、船体を沈めたまま日本の領海を通過したこともある。近年は中国の法執行当局の船舶が、尖閣諸島近海を巡視している。
日本の当局の反応は、中国を孤立化させない配慮から抑制されている。日本は中国船による領海への侵入にしばしば抗議してきたが、海上で中国船に挑むことは稀だった。
日本の国内法の欠陥と国際法の曖昧な定義付けが日本の反応を弱めていた。中国の法律は排他的経済水域(EEZ)において船舶が許可なく海洋調査を行うことを禁じているが、日本にはそのような法律はない。このため、日本政府は領海で法を執行するための手段をほとんど持ち合わせていなかった。01年、当時の田中外相は国会で、日本のEEZにおいて中国が資源調査を行うことに何ら違法性はないと発言し、日本の国防関係者を苛立たせた。
決め手となったのは、2005年に中国が東シナ海で行った資源調査だった。これを受けて日本は07年、領海における積極的な活動を支えるための法的手段を整えた。この年、成立した海洋基本法は、日本の資源を保護するための当局による実力行使を容認するものだ。さらに今年4月には政府が新設した総合海洋政策本部が「海底資源エネルギー確保戦略」をまとめている。
こうした動きは、領海での法の執行に向け、海上保安庁をかつてないほど積極的に行動させる日本政府の意向を浮き彫りにする。日本は尖閣諸島を取り囲む領海で法を執行するため、より率直になった。
現在の状況は、従来とは異なるより危険な局面を示唆している。過去の危機はナショナリスト団体が起こしたものだった。今回の衝突は、日中両国が領有を主張する海域での管轄権の執行により引き起こされた。
海事管轄権の問題は無視できず、容易に共通認識ができるものでもない。しかしながら、共通認識に向けて努力することが、東アジアの海の秩序を維持するために日中両国がとれる唯一の方策かもしれない。
(マニコム氏はカナダのバルジリ・スクール・オブ・インターナショナル・アフェアーズの博士研究員)