「WBA世界Sフェザー級タイトルマッチ」(20日、さいたまCA)
王者・内山高志(30)=ワタナベ=が、挑戦者ロイ・ムクリス(23)=インドネシア=を5回2分27秒TKOで下し2度目の防衛に成功した。5回に右フックでぐらつかせると、6連打を浴びせてキャンバスに沈めた。試合後、挑戦者はアゴ骨折の疑いで病院に搬送された。王座奪取から3連続KO勝利は日本ボクシング史上初。V3戦は来年1月に同級暫定王座ホルヘ・ソリス(メキシコ)との王座統一戦が濃厚だ。またWBC世界Sフライ級王座決定戦は、同級1位・河野公平(29)=ワタナベ=が、同級2位トマス・ロハス(30)=メキシコ=に大差判定負けし、王座獲得はならなかった。
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勝者コールを受けた王者に歓喜の笑顔はなかった。表情を引き締め、リング上から四方に頭を下げた。「7月に(ムクリスの)マネジャーが亡くなったのを会見で聞いていたから、リング上でいつものようにワーと喜べなかった」。武士のごとく敗者を敬い、心中を気遣った。
衝撃の失神KO劇だった。5回、タイミングの良い右フックが挑戦者のアゴをとらえた。この一撃で挑戦者の腰が落ち、内山は一気に畳みかけた。左から豪快に6連打を浴びせフィニッシュ。挑戦者は前のめりにうずくまり、白目をむいてあおむけに倒れ担架で運ばれた。控室に戻ってからアゴ骨折の疑いで病院に搬送された。
今年1月に12回TKOで王座を奪取し、5月の初防衛戦は6回TKO勝利で飾った。これで日本初となる世界王座奪取からの3連続KO勝利。デビューからの連勝を「16」(13KO)に伸ばした。「KOダイナマイト」の異名を持つ王者は、KOの秘けつを問われると「絶対に勝ちたいと思ってやってきた練習量です」と即答した。
実直な性格の内山は派手なパフォーマンスを嫌う。練習態度もまじめそのもので、「努力」で世界のベルトを勝ち取った。渡辺会長が将来、政治家への転身を勧めるほどの人格者。拓大ボクシング部では主将を務め、人望も厚く、この日の試合のチケットを1人で900枚売りさばいた。
「ボディーが効いていたのでガードが下がったところに右が入った。最後はうまくまとめられた」と納得顔の内山は、連続KOに関しては「たまたまです」と謙虚な姿勢を見せた。V3戦は暫定王者ソリスとの王座統一戦が濃厚で、海外の可能性もあるが「ソリスに勝てば価値も上がるし、(決まれば)行く」と海外進出へ意気込みを見せた。