琴禮に勝って平成生まれで初の十両昇進の可能性が出た舛ノ山(撮影・田村亮介)
「大相撲秋場所9日目」(20日、両国国技館)
東幕下3枚目の舛ノ山(19)=千賀ノ浦=が琴禮を押し倒して勝ち越しを決め、来場所の十両昇進へ大きく前進した。昇進すれば史上初めての平成生まれの関取誕生となる。横綱白鵬は徳瀬川を上手投げで退け、今年初場所14日目からの連勝を「56」に伸ばした。今場所進退をかけるかど番の大関魁皇は大関把瑠都に押し込まれながらも、背後に回っての送り出しで5勝目を挙げた。大関琴欧洲が敗れたため、全勝は白鵬1人となった。
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平成2年11月1日生まれの舛ノ山が夢に大きく近づいた。元十両の琴禮を真っ正面から押し倒し、小さくこぶしを握りしめた。「一気に走ろうと思いました。うれしいですけど、まだあるので」。取組後は控えめに喜びをかみしめた。
相撲協会所属の力士712人のうち、平成生まれは261人。その中で最も早く一人前の力士といえる十両に手をかけた。あこがれの力士は千代大海で、「空揚げが好物です」と笑う顔には、まだあどけなさが残る。
わんぱく相撲では全国3位に入る活躍ぶりだったが、家庭の事情で中学3年時に母マリア・クリスティーナさん(49)の故郷フィリピンのイロイロ市で1年を過ごした。雨が降れば家が水浸しになる環境で、水売りをして家計を支えた。
入門したのも母を助けたい一心だった。介護ヘルパーをして日本で暮らす母を思い、舛ノ山は「フィリピンで仕事をしないでゆっくり暮らしてほしい。家を買ってあげたい」とつぶやいた。新時代のヒーロー候補は、苦労人でもあった。
(2010年9月20日)