中日スポーツ、東京中日スポーツのニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 中日スポーツ > 格闘技 > 紙面から一覧 > 記事

ここから本文

【格闘技】

河野公平はまたも世界奪取ならず

2010年9月21日 紙面から

◇WBC世界スーパーフライ級戦

9回、ロハス(右)の左が河野の顔面にヒット=さいたまスーパーアリーナで

写真

 1発のパンチが観客の心を揺り動かした。河野公平(29)はメキシコの強豪、トマス・ロハス(30)に大差の判定で敗れ、王座奪取はならなかった。だが、最後の最後で繰り出した右フックは、相手をリングにはいつくばらせる、こん身の一撃だった。敗れた男の背中には、いつまでも健闘をたたえる拍手が送られた。

 ジャッジ2人が5ポイント、最大9ポイントがついた0−3判定の完敗。2度目の世界挑戦も不発に終わった。それでも河野は最終12回、右フックでダウンを奪い、見せ場をつくった。涙を浮かべ、頭を深々と下げてリングを降りる際、観客から「また次があるぞ。ガンバレ!」の声が次々に飛んだ。大歓声を浴びての敗戦だった。

 序盤からサウスポーのロハスのペースだった。手数とスタミナが武器の河野を左右のフットワークとアッパー、フックで翻弄(ほんろう)。河野をまったく寄せ付けず、早々と主導権を握った。オープンスコアの8回を終えて大差をつけられた河野陣営には、残りの4回を前に悲壮感が漂った。

 そんな状況下での最終回。河野は執念で一矢報いた。右ストレートで追い込み、絵に描いたような右フックでダウンを奪い、その後も猛ラッシュ。大逆転KOはならなかったが、百戦錬磨のロハスに「焦った」と言わしめた。

 「世界チャンピオンになるためにやってきた。なれなかったんで…。いろいろあるんで。みんなと相談して」。試合後、河野は現役続行と引退の間で揺れる気持ちを口にした。だが、土壇場で出た必殺のKOパンチは、見た者の脳裏に焼き付いている。 (山崎照朝)

 

この記事を印刷する

中日スポーツ 東京中日スポーツ 中日新聞フォトサービス 東京中日スポーツ