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【格闘技】

内山高志が3連続KOで相手失神

2010年9月21日 紙面から

◇WBA世界スーパーフェザー級戦

5回、ロイ・ムクリス(奥)にTKO勝ちした内山高志=さいたまスーパーアリーナで(七森祐也撮影)

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 WBA世界スーパーフェザー級タイトルマッチは、王者の内山高志が、挑戦者ロイ・ムクリス=インドネシア=に、5回2分27秒TKO勝ち。2度目の防衛に成功した。左ほお骨を折られる猛攻で失神したムクリスは病院送りとなった。日本ジム所属通算62人の世界王者で「王座奪取から3連続KO」は初の快挙。次戦は来年1月、暫定王者ホルヘ・ソリス=メキシコ=との統一戦が有力だ。WBC世界スーパーフライ級王座決定戦は、同級1位の河野公平が判定で敗れ、王座奪取はならなかった。

 またしてもダイナマイトが爆発した。戦慄(せんりつ)の失神TKO。王座奪取からの3連続KOは国内初の快挙だ。歴代世界王者62人の中でもスペシャルな存在になった。

 「記録的にはそうなってるかもしれませんけど、まだ諸先輩方に実力が追いついていないので」

 5回、右フックから左右6連発。ピクリとも動かない挑戦者を心配するかのように、内山は表情を変えなかった。挑戦者は担架で退場、救急車で病院に直行した。左ほお骨を骨折、検査入院という衝撃の「右」だった。

 KO率は歴代2位の81・3%。次戦KO勝ちなら国内トップに躍り出る。なぜ、こんなに倒すことができるのか−。「絶対に勝ちたいという練習量。それとどうやったら勝てるか毎日考えている」と解説する。ゲームセンターのパンチ力測定器を壊した約700キロという破壊力に疑いはない。ただ、それだけではない。「KOダイナマイト」の異名を持つが、爆発させるまでには緻密(ちみつ)な計算がある。

 「今回のカギは右ボディーストレート。4回終わって、相手のボディーがジワジワ効いているのが分かった。集中力が切れた今なら顔面に右フックが決まるな、と」

 武器は強烈なボディーブローだ。序盤は警戒されないように、わざと弱く打つこともある。相手が油断したところで強く放つ。性格と似てどこまでも慎重だ。ボディー打ちはガードが下がるため、危険も伴う。だが、そこにパンチを合わされたことはない。他の選手とは違い、体を開かず真っすぐ打つのが内山流だ。

 試合後、笑顔は一切なかった。それには理由がある。挑戦者ムクリスのマネジャーが2カ月前に急死した。「会見で隣で(挑戦者が)泣いているのも見ているし、つらいのも分かっている。それでも戦ってくれた。だから勝っても喜ぶ気にはなれないんです」。相手を思いやる気持ちがある。

 強くて心優しきチャンピオン。「今やりたいこと? のんびりコーヒーでも飲みたいですね」。そう言って初めて笑顔をみせた。 (森合正範)

 

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