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【コラム 私は見た!】

なぜ九日目に徳瀬川なのか

2010年9月21日

 今場所の白鵬の相撲を見ていて、あれは強烈な効果を持つと感ずることは、実際には両差しにならないでも、いつでも両側を差せるという構えを見せていることだ。両側から攻撃するところまではいかないでも、この余裕のある取り口は、かなり圧力として、対戦相手に襲いかかるに違いない。9日目の徳瀬川戦でも、カメラ角度でよく見えなかったが、右を差し左も差したように見えた。

 この横綱は抜群に巻き替えがうまい。だから、差手争いで横綱に勝ったと思っていても、いつの間にか、その成果を帳消しにされている。その上に、現実に何番も土俵上で見せたように、白鵬は両側で相撲を取れる。

 そのせいもあったのか、いつの間にか、白鵬に向かって差手争いに持ち込む力士が少なくなっているように思える。まあ、しかしそれはあくまで素人が印象として感じていることで、どうでも良い。不思議だと思うことは、中盤戦も終わろうという9日目に、横綱の相手に3勝5敗の徳瀬川が起用されていることなのだ。

 こんなことも、素人がどうのこうのと言うことではないかもしれない。しかし、前頭四枚目で成績もすっきりしていない相手がここで出てくることは、どうなのだろうか。しかも、初顔だときては、盛り上げなければいけない土俵に水をかけるようなことにならないだろうか。

 不文律や実績やらなどと取り組みを作り上げる人たちの苦労のほども考えられはするが、折角新生が目標だと課題と見定めた場所なのである。日一日と興奮の度合いが深まるような演出を心掛けて欲しいと思う。

 魁皇が好調の大関から貴重な白星を上げた。強い魁皇と際どく土俵に立っている魁皇とが、交互に出てくるのは今に始まったことではないが、魁皇に肩入れしているファンには、心臓に良いような土俵が続く。

 背に回って、まわしの結び目を取って送り出した魁皇の完勝なのだが、この一番、把瑠都は何を考えていたのかと、不思議な気分にさせられた。多分成績も悪いし、足のけがを抱えてもいるしと、調子を落としたわけではないが、もうひとつ一気に勝負というところにいけなかったのだろう。そんなことを考えると、魁皇と把瑠都二人の人柄が相撲に出ているようで苦笑させられた。 (作家)

 

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