「阪神4‐2巨人」(20日、甲子園)
大したもんや!阪神は先発した高卒ルーキーの秋山拓巳投手(19)が6回2失点で4勝目を挙げた。初登板で敗れた宿敵・巨人からの自身初勝利となっただけでなく、優勝争いの正念場に立たされたチームを救う、大きな大きな白星。この日、敗れた中日に1・5ゲーム差に迫り、21日からはいよいよ敵地で首位攻防3連戦。頼もしい若虎に続け!さあ3連勝や!!
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守護神から受け取ったウイニングボールを見つめ、殊勲者は静かに笑った。内容には悔いが残る。それでも『涙』のリベンジは果たした。「意識はありました。勝ててよかったです…」。試合後は偽らざる本音がこぼれた。悲願のVへ。秋山が、過去3度の連敗ストップに続き、チームの窮地を救った。
制球力のあるルーキーの球が、珍しく高めに浮いた。初回、先頭坂本に高めの直球を左前に運ばれると、犠打を挟んで2死二塁で打席にラミレス。変化球が使えず、苦しまぎれの直球を狙われた。打球は右中間フェンス直撃の適時二塁打。二塁から坂本が生還して、瞬く間に先制点を許した。
「全体的に調子は良くなかった。カーブが全然決まらなくて…。巨人が相手というのもあって、弱気になっていました」
対するは巨人。幼少期からテレビで見てきた相手は、リベンジを誓った相手でもあった。8月21日。プロ初登板初先発が、東京ドームでの巨人戦だった。五回までリードを守ったが、六回に連打で2点を失って敗戦。登板後は悔し涙を流した。5試合目の登板で巡った雪辱機会。「意識はない」と繰り返してきたが、自然と力が入った。
三回にも1点を失ったが、味方が逆転した直後の五回だ。2死から小笠原、ラミレスの連打で一、二塁。ここで阿部を迎えた。「代えられるかと思ったけど、投げさせてもらえたので。思いっ切り腕を振りました」。ベンチのタイムで一呼吸を置いて、その初球だった。全身全霊で投じた142キロで、左飛に打ち取った。ピンチを脱したルーキーは、天を見上げてフーッと息を吐いた。
「お前には野球の神様がついてるな」‐。
前回12日のヤクルト戦登板後。携帯電話にメールが届いていた。同級生で、西武に入団した菊池雄星からだった。高校からここまで、常に意識してきた相手。『雄星世代』と呼ばれ、雄星よりドラフト指名が遅かったことで悔し涙も流した。一足先に上がった1軍の舞台。最後の一文は胸に刻んである。「いつか一緒に代表のユニホームを着よう」。ライバルの存在が秋山を支え、秋山の背中を突き動かしている。
前回逆転を許した“魔の六回”を、3者凡退に斬って役目を終えた。6回7安打2失点。最速は145キロを計測した。通算投球回は32回1/3。来季の新人王資格は消えたが、86年の遠山以来となる高卒新人の4連勝は、それ以上の価値がある。
「自信?きょうの内容では、何ともいえないです」と秋山。結果に満足しない姿が頼もしい。弱冠19歳の救世主。運命の尾張決戦に向けて、ルーキーの力投で反撃態勢が整った。
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