【北京・椛島滋】中国外務省の姜瑜(きょうゆ)副報道局長は21日の会見で、沖縄県・尖閣諸島周辺での漁船衝突事件に関し、新たな報復措置として訪日観光の規制を始めたことを明らかにした。日本の観光・小売業界は、7月に始まった中国からの個人観光ビザ拡充で旅行者増に期待していただけに、大きな打撃を受けそうだ。
観光関係者によると、中国国家旅游局が同日午後、北京市内の各旅行社幹部を呼び出し、(1)日本旅行の募集広告停止(2)日本旅行の販売自粛(3)訪日中国人客の安全確保-の3点を通達した。
姜副局長は、訪日旅行の規制について「中国国民は安心して行ける国に旅行したいはずだ」と指摘。「この責任は、間違いに間違いを重ねて事態を悪化させた日本側にある」と強調した。北京のある旅行社は同日夜、「10月1日からの国慶節休暇を利用した日本への旅行客にキャンセルが出始めた」と話した。
姜副局長は尖閣諸島周辺海域へ中国海軍が派遣されるとの情報確認を求めた質問に「把握していないが、中国の領土と主権を守る決意と意志は揺るぎない」と述べ、海軍派遣を否定しなかった。
また、日本側が衝突時のビデオ画像を公開する場合の対応に関し「漁船が正常に操業していた際、多くの日本巡視船に囲まれ、衝突されて損害を受けた」と発言。これまでは中国メディアのみが「衝突された」と報じていたが、姜副局長は中国政府として初めて衝突されたのは中国漁船との認識を示した。
一方、26日に北京で開かれる予定だった、日中の政府や企業関係者が環境協力などを話し合う「グリーン経済・資源循環政策ハイレベルフォーラム」が延期。上海の百貨店でも日本を売り込むイベントが中止になるなど漁船衝突事件の余波はエスカレートしている。
=2010/09/22付 西日本新聞朝刊=