2010年9月20日10時9分
ベイズの定理は「条件付き確率」を求めるための公式で、トーマス・ベイズという18世紀イギリスの牧師の、没後に発見された論文に書かれていました。
この定理は、何かの確率を求める際に、事前にわかっている情報で求められる確率と、後で新しい情報が付け加わったときの「条件付き確率」は異なるということを表しています。
そして、この定理は、200年以上たった現在でも、迷惑メールの抽出や検索エンジンでの順位付け、株の売買におけるアルゴリズムなど、さまざまな日常的な場面で使われています。
ベイズの定理自体は、確率論における比較的単純な定理なのですが、課題は、私たちの直感はどうしても、事後に情報が入ったとしても、事前の確率に縛られてしまい、判断が狂うということです。
単純な例を考えてみましょう。区別のつかない三つの袋の中に、それぞれ「赤・赤」「赤・白」「白・白」の二つの球が入っているとします。袋を一つ選んで、その中から球を一つ取りだしたところ、赤球であった場合、残りのもう一つの球が白球である確率はどのくらいでしょうか?
私たちは直感的に、もともとの玉の数が赤と白では同数ですから、最初に赤を選んだ場合、次が白である確率は2分の1だと思いがちです。しかし、実際は3分の1なのです。
最初が赤球だった場合、「赤・赤」、または「赤・白」の袋からとったわけですから、残りの赤球と白球は同数ではありません。赤球2個、白球1個の計3個のうちから白球を選ぶわけですから、確率は3分の1になります。
ポイントは、最初に赤をとった時点で、「白・白」が母集団から除かれるということで、ここを即座に理解できないと、自分に不利な意思決定をしてしまうということになります。
ベイズの定理を理解していると、わずかな情報であっても、それを手に入れたとき、即座に判断材料として母集団を修正し、その情報がないときよりも、より的確な意思決定ができるようになります。「統計は苦手」とさじを投げることなく、買い物から恋人選びまで、日常的な意思決定に上手に活用することをお勧めします。
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参考文献 宮谷隆著「ベイズな予測 ヒット率高める主観的確率論の話」(リックテレコム)
1968年東京都生まれ。経済評論家・公認会計士。早稲田大学大学院ファイナンス研究科、慶応大商学部卒。当時最年少の19歳で会計士補の資格を取得し、マッキンゼー、JPモルガンなどを経て経済評論家として独立。05年、「ウォール・ストリート・ジャーナル」から「世界の最も注目すべき女性50人」に選ばれる。著書に「お金は銀行に預けるな」(光文社)など多数。
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