厚生労働省の村木厚子元局長(54)に無罪が言い渡された郵便不正事件で、大阪地検特捜部の主任検事、前田恒彦容疑者(43)が証拠品として押収したフロッピーディスク(FD)のデータを意図的に改ざんした疑いが強まったとして、最高検は21日、証拠隠滅容疑で前田検事を逮捕した。大阪地検は村木元局長の判決に対する控訴を断念し、上訴権を放棄した。これにより村木元局長の無罪が確定した。
前田検事は20日までの大阪地検の調べに「誤ってデータを書き換えた」などと説明したとされる。最高検は21日午前、大阪地検や大阪高検から報告を受けて対応を協議し、本格的な捜査に乗り出すことを確認。在京の検事を大阪に派遣して前田検事本人から事情を聴いた結果、強制捜査が不可欠と判断したとみられる。
最高検は、東京高検や東京地検の検事を投入して捜査態勢を整えており、前田検事の当時の上司や同僚らからも事情を聴き、組織的な関与がなかったかについても調べる方針。
FDには、厚労省元係長、上村勉被告(41)=虚偽有印公文書作成・同行使罪で公判中=が作成した偽証明書のデータが保存されていた。09年5月26日に特捜部が上村被告の自宅から押収した時点では最終更新日時は「04年6月1日午前1時20分」だったが、弁護側が返却されたFDを調べたところ、「6月8日午後9時10分」に書き換えられていたという。
公判で検察側は、村木元局長が04年6月上旬ごろ、偽証明書の作成を部下だった上村被告に指示したと主張しており、前田検事が検察側の構図に合うようにデータを改ざんした疑いが浮上している。
村木元局長を無罪とした10日の大阪地裁判決は、改ざん前のFDの更新日時を記した捜査報告書の記載などから「偽証明書は5月31日深夜から6月1日早朝までに作成された」と認定していた。
21日午後9時過ぎから会見した最高検の伊藤鉄男・次長検事は「重大、深刻に受け止めている。事実関係を徹底的に捜査したうえで、早急厳正に対処する」と話した。そのうえで、無罪判決について「基本に忠実な捜査が不徹底だったと言わざるを得ず、村木元局長にご負担をかけたことを誠に申し訳なく思っています」と述べ、元局長に謝罪した。
毎日新聞 2010年9月21日 21時25分(最終更新 9月21日 21時58分)