大阪の父が開腹手術を受けることになった。エキスパートの大学医を紹介してもらえ、検査、入院は手際よく進んだ。7年前の深夜に父が脳内出血で倒れた時、救急搬送先が家から近かったうえ当直医が脳外科医だったため、迅速な処置で命だけは助かった。地元で医師・病院に恵まれるかどうかが、生死を分けると実感した▼自分が妻子と暮らす大田市は、常勤医不在により市立病院の外科救急医療、手術が不可能だ。4~8月の救急出場状況では、市外搬送人数は、救急告示取り下げ前の昨年同時期の1.78倍にのぼっている。市外搬送率も1.8倍の41.6%。市は外科、整形外科の再建に努力しているが、今は出雲市への救急搬送の迅速化がやっとという状態だ▼もしあの時の父と同じ状態になったら同じようには助からないだろう。両極端を知っているだけに、一層医療の格差が見える。大都市と地方で助かる命の差が無いよう、早期に状況が好転するよう、わが身にかかわるだけに切実に願っている。【鈴木健太郎】
毎日新聞 2010年9月21日 地方版