立派な医者、とは、どんな医者だろう。
患者さんの立場に立ち、患者さんのことを心から考え、自分のプライベート等を全て犠牲にして、誰かの為に尽くす医者?
死の淵にいる人を、さまざまな処置を施して、息を吹き返させる医者?
何日も寝ずに病院に泊まり込み、十分な休息を得ることもなく、一心不乱に働く医者?
私は、卒業してすぐに、美容外科の道を選びました。
どうして初期研修医制度を履修しなかったのか、その理由は一つではありません。
「やる気がなかったんだろう」「根性が足りないんだろ」「さっさとお金儲けがしたかったんだろう」
そんな風に思われても、あるいは仕方がないのかもしれません。
分かってほしい、理解してほしいとは思わない。
世間の人は、いや、医者の中にだって、「医者は、病気の人を治すのが仕事。それをしない医者は人間のクズだ」と思っていらっしゃる方は、非常に多い。
けれども、そういう意見に出逢った時、病気の人を治すことだけが「人助け」なのか、私は甚だ疑問に思う。
研修医をすることが全てであるとも思わないし、病気の人を治療することが全てだとも思いません。もちろん、病気を治すということは、素晴らしい仕事であるし、救命を続ける医者を、私は、嫌味なく、心の底から尊敬しています。
けれども、医者は神様ではない。
プライベートを犠牲にして何かに打ち込む、それが他人を助けることであれば、それほど素晴らしいことはないでしょう。 でも、それが全てだと、私は思いません。
私は、もともと医者になりたいと思ったことはありませんでした。
「医者です」と言うと、「幼い頃から病気の人を助ける医者に憧れ、患者さんの事を考えて自分をついつい後回しにしてしまう」という医者像を、人は求めがちです。
でも、そうじゃない医者は、全員クズですか?
全員、薄っぺらい人間ですか?
医者になる為に、中学高校のころから努力を重ね、勉強に励み、その中で、医者という仕事について、診療科について、将来について、自分のプライベートについて、真剣に悩み、真剣に傷つき、時には泣いた事もある。
その結果、「病気を治す医者」「研修医として日々切磋琢磨する医者」にならないという選択肢を選ぶ人は、全員、「薄っぺらい医者」なのでしょうか。
私は、美容外科の仕事にやりがいを持っています。
自分でできることはまだまだ少なくても、患者さんが笑顔で帰っていく姿を見ると、本当によかったな、と思いますし、
実際、美容外科の施術を受けることで、人生が変わることも沢山あると思います。
美容外科医としてやっていくためには、他の医者と同じように、大変な努力も必要だし、技術を磨くためには、長い時間もかかります。つらいことも苦しいこともたくさんあるし、ただ、「キレイになれる」という気持ちだけでは続かないことも、たくさんあります。
私の勤務先の院長は、美容外科医としてずっと長年働いているわけですが、
患者さんのことを考えて、「キレイにしよう」という気持ちを誰よりも持っていて、そのために、見える部分見えざる部分で努力を重ねて、今があります。
そんな院長みたいになりたい、と思うし、私も、もっともっと頑張らなきゃいけないな、と日々思う。私なりに、努力もしているつもりです。
なのに、「病気の人に接しないから、医者のクズだ」という見方をされてしまうのは、すごく悲しいことだな、と思います。
何が立派で、何が薄っぺらいのか。
何が正しくて、何が正しくないのか。
それを判断するのは、個々人ですが、
見えない部分をなかったことにして非難するやり方は、私はあまり好きではないな、と思います。
どんな仕事にも、垣根や地位の差はないはずだし、
どんな仕事だって、いいところもあれば悪いところもある。
そんなシンプルなことなのに、
意外と、忘れがちです。
うーん、明日も仕事頑張ろう☆