築地市場(東京都中央区)が移転を予定している豊洲地区(江東区)の土壌汚染問題で、元の土壌だけでなく、その上に後から運び入れた盛り土からも30地点で汚染が見つかっていたことが分かった。盛り土の大半は汚染されていないとして、都はそのまま使う予定だが、汚染対策の専門家は「盛り土全体を調べる必要がある」と指摘している。
移転の最大の障害となっている土壌汚染で新たな問題が浮上したことで、移転を不安視する市場関係者らの批判が高まることは必至だ。盛り土全体を調査することになれば、2014年度開場のスケジュールに影響が及ぶとともに、汚染対策費がさらに膨らむ可能性がある。
問題の盛り土は、都内などの公共工事の残土が、東京ガスのガス工場跡地の古い地盤の上に運びこまれたもので、予定地約40ヘクタールの4分の3を覆っている。盛り土の厚さはおおむね2.5メートルで、朝日新聞の試算では約80万立方メートル。
都は07年以降、古い地盤の土壌や地下水の調査を約4千地点で実施。汚染が見つかった地点では、汚染の種類ごとに約60〜700地点で古い地盤の上方50センチの盛り土も調べた。その結果、盛り土からも30地点で環境基準を超える有害物質が見つかった。最も高いところではシアンが環境基準の25倍、ヒ素が24倍、鉛が13倍に達した。この3地点は古い地盤の汚染より濃度が高かった。盛り土の表層部分では、詳しい調査が行われていない個所がまだ多いという。立川涼・愛媛県環境創造センター所長は、「放置すれば生態系に悪影響を及ぼす恐れもある」と話す。
都が設置した有識者による専門家会議は08年、高濃度汚染が見つかった古い地盤の地盤面以下2メートルまでの土壌をすべて入れ替える汚染対策などをまとめたが、盛り土は会議の場で詳細な分析を行わないままになっていた。都は09年、盛り土を汚染のない「健全土」として新市場の土壌に利用する計画を公表した。