経済に目覚めた北の住民たち、コメを買い占め!?

収穫期にもかかわらずコメ価格が異例の高騰

自然災害に見舞われた上、韓国からの支援も途絶える

来年の食糧難に備えて備蓄

 収穫期を控えた時期にもかかわらず、北朝鮮では現在、コメ価格が大きく高騰していることが、20日までに分かった。複数の脱北者によると、北朝鮮は慢性的な食糧難に苦しんでいるが、それでも通常は収穫期になると、コメの価格は下落傾向にあったという。ところが北朝鮮の内部事情に詳しい消息筋によると、今年7-8月まで1キロ当たり北朝鮮貨幣で1000ウォンほどだった市場でのコメ価格が、9月初めの時点で1200ウォンにまで上昇したという。ちなみに、北朝鮮労働者の平均月収は3000ウォンほどだ。

 北朝鮮のコメ価格は、貨幣改革直後の今年1月には1キロ当たり600ウォン台だったが、貨幣改革が失敗に終わった3月初めには、一気に1000ウォン台にまで跳ね上がった。しかし、北朝鮮当局が2号倉庫(軍糧米倉庫)の備蓄米を放出するなどして、人為的に供給を増やしたことから、春窮期(前年の食糧を食べ尽くす、春の端境期)に当たる4-5月のコメ価格は、1キロ当たり400-500ウォンと比較的安定していた。

 韓国政府の安全保障担当部処(省庁)の当局者は、「現在コメ価格が上昇しているのは、今の需給状況が問題なのではなく、住民たちが来年上半期の食糧事情を懸念しているからだろう」と語る。北朝鮮では2007年の水害以降、大規模な自然災害は発生していないが、今年は雨が多く、台風も上陸した。さらに今年上半期は冷害の影響で、トウモロコシの収穫も例年を下回った。

 韓国政府はこれまで毎年20-30万トンずつ肥料の支援を行っていたが、07年を最後に途絶えていることから、北朝鮮の食糧事情はさらに悪化するものとみられる。韓国政府筋は、「肥料不足の影響は今年から出てくるだろう。北朝鮮では、一見すると稲の生育が順調に見えるが、実際は収穫にまで至らない可能性が高いと聞いている」と語った。つまり、単位面積当たりの食糧生産が減少するということだ。ある脱北者は、「市場の活性化で北朝鮮住民たちも経済観念を持つようになった。今年は収穫量の減少が見込まれているため、来年春ごろにはコメの価格が高騰する可能性が高くなっている。それに備えて、住民たちは今からコメの確保に動いているようだ」と述べた。

 最近、北朝鮮が韓国に対して宥和攻勢をかけているのも、来年は食糧難が深刻化するものと予想されており、韓国からの大規模支援をあらかじめ確保するための動きとみられている。北朝鮮は今月4日、韓国側に対し、水害復旧の名目で3年5カ月ぶりにコメ支援を求めてきた。その一方で、離散家族再会といった人道主義も強調している。韓国の過去の政権は、離散家族再会などの見返りに数十万トンのコメや肥料を北朝鮮に与えていた。韓国政府筋は「もし北朝鮮が哨戒艦『天安』沈没事件について謝罪し、韓国が大規模な食糧支援を決めたとしても、実際に北朝鮮が食糧を手にするのは3-4カ月後になる。北朝鮮による宥和のポーズは来年に備えるためだ」とコメントした。

 2000年以降、北朝鮮では毎年100万トンほどの食糧が不足している。そのうち40万トンは韓国からの支援で埋め合わせ、残りは中国から「友好価格(国際相場の7分の1から9分の1)」で輸入するか、あるいは中国との小麦貿易、海外からの支援などで充当した。しかし08年からは、韓国からの支援が途絶え、最近は中国も支援の見返りに改革開放を求めるなど、北朝鮮にとって状況はますます悪化している。

アン・ヨンヒョン記者

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
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