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 投稿遅れました。
 では、楽しく読んでいただければ幸いです。
第九話 能力は関係ないだろ!! (初)
七月十八日の昼下がり。
 ある一角にあるファミリーレストランの前に、三人の少年の姿が合った。
 「いや~。悪いな二人とも。おごってもらって」
 二人の少年は互いの顔を見合った。しばらくして、一人の少年がお礼を言ってきた少年に向き直った。
 「いいって。どうせ、当麻はほとんど金ないだろ?」
 「そうだよ。不幸体質の当麻」
 ファミリーレストランの前にいるのは上条当麻と神風龍人。それから、馬鹿男ばかおである。
 悠人がいきなり怒鳴り出した。
 「って、馬鹿男をいつまで引き摺るの!!」
 それに対して、手を肩の位置までもっていき、首を傾けた。
 「なぁ、当麻。こいつは一体何を言っているんだ?」
 「さ、さぁな? と、とりあえず他の客の邪魔になるからどっかに行こうぜ」
 俺は二つ返事で承諾した。
 悠人はというと、相変わらずおかしなことを言っている。
 
         ***
 「えーと……」
 花柄のついたピンク色の小さな鞄を肩に掛けた小学校低学年くらいの少女が第七学区を歩いていた。
 少女は地図を片手にきょろきょろと辺りを見回す。しかし、彼女が目的としている建物は見当たらない。
 「……こまったな」
 少女にとって、この辺りは初めて来る場所である。
 頼みの綱は手にしている地図一枚。
 だが、やはり地図で見るのと実際に見るのでは勝手が違うらしく、少女は既に迷いかけていた。
 地図というものは一度でも悪いツボに嵌ってしまうと、何処で道をたがったか解らなくなり、余計に混乱してしまう可能性を持つ。
 この時の少女は、まさにその一歩手前であったと言えた。
 「あれ?」
 しかし、そんな迷子予備軍の少女に一つの幸運が舞い降りる。
 地図と風景を照らし合わせるように周囲を見回していた際に、目の前から歩いてくる三人の人影に気がついたのだ。
 一人はツンツンと立った髪の毛をしていて、横にいる少年は髪と目の色が赤という珍しい少年。そして、そのまた横にいる独り言を口にしている少年。
 「あ、ジャッジメントのおにい『馬鹿男』『誰が馬鹿男だ!!』ちゃん!」
 三人のうち、ぶつくさ言っている少年を少女は知っていた。
 ぶつくさ言っている少年は駆け寄ってきた少女の頭に手を置き、くしゃくしゃと撫でた。
 その光景を見ていた、当麻が龍人に耳打ちした。
 「だ、誰だ? 悠人と知り合いなのか?」
 その問いに龍人はわざと、悠人に聞こえるように言った。
 「あ、気にするな。悠人はロリコンなだけだから!!」
 「ま、マジか!!」
 当麻はそう言いながら、一歩後ろに下がった。
 その行動に対して、悠人は弁解しようとした。
 「ち、違うよ!! 風紀委員ジャッジメントの仕事で出会った女の子なだけだよ!! それと、決してロリコンじゃないからね!!」
 少女は首を傾げていた。
 「ねぇ。ジャッジメントのお兄ちゃん。『ロリコン』って、なに?」
 悠人が『な、なんでもないよ』と笑みで言っているのに対し、龍人は傍まで来て告げようとした。
 「“ロリコン”ってのはな…」
 「…つまり、『わーわー。言うなっての!!』」
 龍人は悠人に対して言った。
 「うるさいぞ、ロリコン!!」
 「わー!! だから、ロリコンじゃないっての!! そして、どうして当麻は少しずつ後ろに下がって、僕と距離を取ろうとするのさ!!」
 上条は悠人に残酷な事を告げた。しかも、真顔で。
 「いや、だって、お前は『風紀委員の仕事で合った』と言ったが、お前が風紀委員なはずないからよ。ロリコンだと思って…」
 「…違うのか?」
 ブチンッ。
 悠人の中の何かが切れたらしい。
 悠人は少し離れて行き、そしてこう言い放った。
 「皆、焼けちまえーー」
 悠人はてのひらに巨大な炎を作り、それを二人の少年と少女の方に投げた。
 上条は巨大な炎と龍人&少女の間に入り、巨大な炎が目の前まで近づくと裏拳うらけん気味に右手を横薙よこなぎする。
 巨大な炎はそれだけで、消えてしまう。
 その間に、龍人は空間移動テレポートで悠人の近くに移動していた。
 龍人は一発悠人の腹に拳を叩きこんだ。
 悠人はその一発で、白旗を上げた。
 「ま、参りました」
 しばらくすると、風紀委員が来てしまい、三人は説教を食らった。少女はその光景を呆然と眺めていた。
 三人の少年は説教が終わった後、少女から行きたい場所を聞いた。
 今は、その店、“セブンスミスト”に向かって歩いている四人。
 「畜生。悠人が勝手に暴走しただけだろうが!! なんで、止めた俺達まで怒られなきゃいけないんだよ!!」
 「いや、そもそもの原因は龍人でしょ!!」
 「んなもん、知るか!!」
 「ムキッー。今ここで、龍人を仕留めてあげるよ!!」
 「やれるもんならやってみろ!!」
 二人は互いに胸倉を掴み合った。
 そこに、上条が割って入る。
 「や、止めろっての!! また風紀委員が来るぞ!!」
 「知るか!! 第一、こいつが風紀委員だろ!!」
 龍人は悠人を指さしながら言った。
 だが、それが失敗だったのだろう。

             ***

 「第一、風紀委員が問題起こしてどうするんだっての!!」
 「う、めんぼくない」
 そんな会話がゲームセンターの店頭にあるクレーンゲームを興じていた眼鏡の少年の耳に届いた。 
 携帯音楽プレイヤーのイヤホンを耳に付けていた少年だったが、耳に届いた会話はすぐ近くで行われたらしく、聞き取ることが出来たらしい。
 その会話に含まれていた“風紀委員”という単語に少年は反射的に後ろを振り返る。
 そこには、争いをしている二人の少年とそれを止めようとしている少年、そしてそれを眺めている少女が一人。
 眼鏡の奥にある少年の瞳が、愉悦で細められる。
 ……今日の狙いはアイツだ、と。
 そこにいる誰もが腕章を付けていないが、すぐに誰が風紀委員か分かる。なぜなら、一人の少年が争っている少年を指さしながら、『お前が風紀委員なんて、マジで信じられねーよ!!』と言っているからだ。
 少年は黒い手袋を嵌め、先程まで興じていたクレーンゲームの戦利品……相撲取りのような格好をした蛙の縫いぐるみを取り出し口から取り出す。
 それを片手に持ち、少年は直ぐ様に四人を追い掛ける。
 折角の獲物を逃がす訳には行かない。
 そして、四人を尾行し始めてから間も無く。
 少年は四人が消えた建物の前で足を止め、その建物を見上げた。
 学園都市ではかなり有名な《セブンスミスト》と呼ばれる服飾チェーン店。
 その第七学区支店の姿が、少年の目に焼き付けられていた。
 (皆、皆。風紀委員もろとも吹き飛ばしてやる)
 逸る気持ちに導かれるままに店内に入ろうとした少年であったが、その直後、ふと目に入ったある物に再び足を止める。
 少年の目が捉えたのは、とある腕章。
 三人組らしい少女達の一人。花をあしらった髪飾りを身に付けた少女の腕にある風紀委員を示す腕章であった。
 「ククク……」
 その少女達が《セブンスミスト》店内に入っていく光景を見送った少年の顔には、笑みが浮かんでいた。
 (スゴイッ! スゴイッぞ! 一気に、二人の風紀委員をやれるなんて、スバラシイッ!)
 不気味に笑み崩れる少年は胸中で狂喜する。
 憎き無能な風紀委員が、のこのこと二人も。
 これは神が自分にくれた新しい世界を作る大好機チャンスに違いない。
 狂気に酔う少年はそう信じて疑わなかった。
 そして、少年……介旅かいたび初矢はつやは今度こそ逸る気持ちに導かれるままに、少年達と少女達の後を追って《セブンスミスト》店内へと消えていった。
 だが、彼が知るはずがなかった。これから起こる出来事を知っている少年が二人もいる事を。
 虚空爆破グラビトン事件に突入です。
 読んでくださった方、ありがとうございました。