【社説】ソウル広場を政治集会の場としてはならない
呉世勲(オ・セフン)ソウル市長は19日、現在許可制となっているソウル広場での政治集会やデモを、申告制に変更するという条例改正案の交付を拒否した。この条例は以前、野党が多数を占める市議会が議決していたが、これに対して呉市長は再審議を要請していた。ところが野党は呉市長の要請を受け入れず、当初の改正案を再議決したため、呉市長は交付を拒否する手段に打って出たのだ。市議会議長が法律に基づいて新たな条例を公布し発効すれば、警察が集示法(集会とデモに関する法律)に基づいて禁止した場合を除き、ソウル広場ではあらゆる政治集会やデモが可能となる。
野党は「条例よりも上位の法律である集示法では集会などが申告制となっているのに、ソウル市は条例で許可制としている。これは明らかに違憲」と主張する。その一方で野党は、同じようにソウル市が許可制としている光化門広場や清渓川広場、世運緑の帯公園については、申告制への転換を進めようとはしていない。
これに対してソウル市の主張は、「集会やデモの自由を保障する問題と、ソウル市民全体の財産であるソウル広場の使用手続きや方法を決める問題は、法的にまったく別」というものだ。法体系からすると、ソウル広場に関する条例の上位法は集示法ではなく、共有財産管理法という見方が有力だ。同法20条では、「自治体の長は(ソウル広場のような)共有財産の使用を許可することができる」となっている。ソウル広場の使用を許可制にしても、法的には何の問題もないということだ。
ところがかつて、ソウル市が許可を出さなかったにもかかわらず、これを無視してソウル広場で集会が行われたケースは、過去6年間で72件に達する。そのうち40件は、集示法に基づく警察への申告さえ行われなかった違法集会で、しかもこの40件のほとんどは、米国産牛肉輸入反対、4大河川(漢江・洛東江・錦江・栄山江)事業反対、平沢米軍基地移転反対などを主張する野党、あるいは特定のイデオロギー団体による反政府的な性格の政治活動だった。違法な集会が行われると、都心の道路は完全な無法地帯と化して交通はまひし、時には暴力デモが広まって、市民たちが大変な苦痛を受けることになる。新たな条例が施行されると、集会やデモを職業とする活動家に対し、1年365日欠かすことなく、ソウル広場を政治闘争の舞台として明け渡す結果となる。こうなると、市民はどれだけ忍耐を強要されるか分からない。ワシントンのナショナル・モールやニューヨークのタイムズスクエア、ロンドンのトラファルガー広場、パリのパリ市庁舎場でも、集会やデモを行う場合には市当局の許可が必要となっている。
法的にも現実的にも、ソウル広場での集会を申告制にするというのは、議会で多数を占める野党が力で押し通せばよいというような問題ではない。ソウル市も、ソウル広場での集会やデモを許可するに当たっては従来以上に柔軟な態度を示すと同時に、市議会が提案する「広場運営市民委員会」の設置に関しても、より前向きな姿勢を示すべきだ。