先週の為替市場は「非不胎化介入」で大騒ぎだったが、そもそも今の水準は円高なのだろうか。次の図は、1995年と現在を比べたものだ。確かにドル/円レート(赤)は15年ぶりの高さだが、各国の物価水準などを勘案した実質実効為替レート(青)でみると5年前の水準に戻った程度で、15年前に比べるとまだ3割以上低い。

名目為替レート(ドル/円 左目盛)と実質実効為替レート(2005年=100 右目盛)
名目為替レート(ドル/円 左目盛)と実質実効為替レート(2005年=100 右目盛)
この最大の原因は物価上昇率の違いで、アメリカのCPIはこの15年の累積で40%近く上がったが、日本はほぼ0%である。むしろ現在は2008年前半までの「円安バブル」が訂正される過程にあり、1ドル=60円台になってもおかしくない。
ただし齋藤誠氏が指摘するように、アジア諸国の為替レートは相対的に下がる一方、資源国の通貨が上がっているので、日本の貿易環境は悪化している。しかしこれは日本政府の為替介入ではどうにもならない。非不胎化介入にも、市場はほとんど反応しなかった。その効果は(インフレ効果のない)量的緩和と変わらないからである。
為替介入が効果をもつのは、プラザ合意の前のように為替相場がバブル的な水準になっていて、政府がそれをつぶすことができるときに限られる。今回は85円ぐらいまでは戻したが、依然として実効レートは最近15年の平均より安い。ゼロ金利では、不胎化も非不胎化も同じことだ。「政府・日銀は断固たる決意で通貨を供給して円高を阻止せよ」などと騒いでいるのは、無知なリフレ派とマスコミだけである。
ただし齋藤誠氏が指摘するように、アジア諸国の為替レートは相対的に下がる一方、資源国の通貨が上がっているので、日本の貿易環境は悪化している。しかしこれは日本政府の為替介入ではどうにもならない。非不胎化介入にも、市場はほとんど反応しなかった。その効果は(インフレ効果のない)量的緩和と変わらないからである。
為替介入が効果をもつのは、プラザ合意の前のように為替相場がバブル的な水準になっていて、政府がそれをつぶすことができるときに限られる。今回は85円ぐらいまでは戻したが、依然として実効レートは最近15年の平均より安い。ゼロ金利では、不胎化も非不胎化も同じことだ。「政府・日銀は断固たる決意で通貨を供給して円高を阻止せよ」などと騒いでいるのは、無知なリフレ派とマスコミだけである。
コメント一覧
多くの企業が為替レートは90円前後に想定して計画を立ています、それに対して実効為替レートはまだまだ円安なんだからというのは、実際に円高で起きている影響を無視した、机上の空論ではないでしょうか?
今の水準でも、産業の空洞化は進んでいます。
なにかに書いてありましたが、実効為替レートでは円安は、PBR1倍切ってるからこの株は割安と同じように杓子定規であると考えます。
今回の介入は投機筋を抑えるためにも必要だったと考えています。
実質実効為替レートで考えると複雑化するのでドルに対する実質為替レートで考えれば、95年の80円は現在換算だと1ドル=57とか58円だそうです。だから当時と比べたら円高じゃないって少しおかしいと思います。
実質為替レートの計算式通りになる条件として、物価上昇率と賃金上昇率が全く同じであること。インフラコストも物価上昇率と全く同じであること。技術水準の差が常に一定であること。その他の制度や税制もほぼ同じであること。そして世界との競争に晒される分野に限った物価指数であることが条件にならなければ現実に当てはまらないと思います。
アメリカは95年当時と比べて物価は上昇しているらしいですが、それが経営者や金融分野や不動産業者や高度技術者以外の従業員の賃金に結び付いているとは到底思えません。つまり、物価は上昇したかもしれないけど賃金の安いアジア諸国の台頭によって賃金上昇は抑えられてしまった。
経済は数学と違って絶対理論ではありません。。昨日正しかった理論が今日正しいわけではありません。実質為替レートの計算はあくまで絶対理論の公式ですが、その理論が上に書いた条件を必要とする以上、間違っていると言わざるを得ません。現実と理論が大きく乖離していると思います。
部品や素材を世界中からかき集めて機械で組み立てる資本集約型産業なら、急激でなければ円高メリットも享受できますが、労働集約的な企業は円高によってドル換算の賃金が上昇して競争できなくなってしまいます。95年当時なら技術的な差もあってしのげたかもしれませんが、今は多くの中小企業の技術差がなくなって完成品メーカーとの地の利以外の優位性しかなくなっています。
だからと言って安易な為替介入には反対です。為替操作国として報復関税やアメリカ議会の政治宣伝に利用されそうです。
実質実効為替レートを論じる際には、どうして2002年からドル円と乖離したのかを考える必要があると思います。
中国が不当に為替レートを割安化させたのは、アジア通貨危機以降で、それ以降、急激に日本国内の生産(=労働)がアジアに移転しました。
中国が為替を極端に割安化させたために、中国との貿易量が急増し、もともと、割安であった人民元の円の実質実効為替レートに占める割合が徐々に増加していますが、人民元は割安を修正する過程にあり徐々に高くなっていますので、実質実効為替レートでは、余り円高にならないように見えてしまいます。
また、労働が中国に移転したために、日本のデフレが深化し、円は実質では割高化しにくくなっています。
日米のインフレ率の違いだけで、円が割安なのか割高なのかを論ずるのは早計だと思いますし、だいたい、それでは2002年以降の屈折を説明できません。
現時点でも、日本の生産者の経営層の考えていることは、いかに、自社の生産を海外に移転するかであり、今後、生産を海外に移転すればするほど、それだけで、他の要素が無くても、実質実効為替レートは安くなる性質を持つことに、ご注意ください。
釈迦に説法だと思いますが、円高で騒ぎになるのは、輸出産業がそれでダメになる。倒産なり海外移転してしまうということが原因です。
先日、日経新聞に、輸出の損益分岐のレートとして大企業93円。中小で95円という記事が載ってました。いくらか掛け値があるかもしれませんが、ドル90円より安くなってしまうと危険水域といえるのではないかと思います。
それで、疑問点は、今の円レートが続くとして、仮に日本の輸出産業がダメになってしまうとしたら日本経済に大きなダメージがあるわけで、それにもかかわらず今の水準が適正だといえるのだろうかということです。物価の比較では説得力がないのではないでしょうか。