- 2010年7月 1日 18:55
- 特集企画
子供目線で展開
千趣会は、消費者参加型イベントとして4月、大阪で男性向けファッションカタログ「メンズ暮らす服」掲載商品のファッションショーを開催した。同カタログは主要顧客の40代女性の向こう側にいる男性顧客の開拓を狙い、今年3月に創刊したもの。今回のイベントは「パパをカッコよくするファッションショー」と題し、子供目線の切り口としたのが特徴だ。

同社はこれまで、既存顧客向けのサービスとしてコーディネート提案等のイベントは行っていたが、特定のブランドでオープンな形の企画を行うのは、今回のファッションショーが初めて。
予め一般から募集した子供(30人)が審査員となり、「メンズ暮らす服」掲載商品による人気コーディネートを決めるというもので、モデル(10人)も一般男性を起用。実際のショーでは、男性モデルが、事前に一般消費者から意見を募集した「パパのファッションで直して欲しいところ」の姿と、「メンズ暮らす服」掲載商品でコーディネートしたファッションで登場する形式で、コーディネートは「メンズ暮らす服」のバイヤーが担当。10種類のコーディネートの中から、子供が選ぶ人気コーディネートを決めた。
当初は、モデルを起用する案もあったが、一般男性(父親)から募集したことがリアル感や手作り感の演出に寄与。また子供から活発な意見が出されるなど、「雰囲気が良く、子供と家族のコミュニケーション作りのイベントにもなった」(広報)。
今回のイベントは、既存顧客から募集したパパのファッション改造プロジェクト「パパをカッコよくし隊」とNPO法人ファザーリング・ジャパン、千趣会で構成する「パパをカッコよくする委員会」主催の形で実施。敢えて企業色を抑えより公的なイベントとしたことが奏効し、地元の全テレビ局に取り上げられるなど、ブランド認知度向上の面でも一定の成果があったようだ。
審査結果は、自社サイトの専用ページで告知し、コーディネートに使用した商品の紹介や、カタログ請求の受け付け等で購買意欲の喚起を図っている。実売の部分では、効果を測定しきれない面もあるが、顧客を巻き込んだブランド訴求策として「こうしたやり方もあるということは分かった」(同)としている。
入賞者100人参加
また、ニッセンは、消費者参加型イベントとして8月に「ニッセン ベスト スタイリング コンテスト2010」を開催する。自社商品を取り込んだコーディネートコンテストで、応募者100人がモデルとして参加。上位入賞者には海外旅行等の副賞のほか、コーディネート作品をネット販売するなどの特典がある。
コンテストは、消費者から寄せられたコーディネートをもとに、新たなブランドイメージを作っていくことを狙いに行う。参加者は一般から募集し、まず書類選考で選出した150人に同社の商品を使った夏のコーディネートを作ってもらい、これをファッション関連の専門家等で構成する審査員が審査。コンテストに参加できる入賞者100人を決定し、さらに入賞者に秋のコーディネートを作ってもらい、一般消費者のネット投票で各賞を決める仕組みだ。
8月21日に都内で開催するコンテストには、入賞者100人がモデルとして参加でき、当日は同社のイメージキャラクターである女優・モデルの香里奈さんも出演。また、上位入賞者(グランプリ1名、準グランプリ1名、審査員特別賞5名)には、海外旅行や商品券などの副賞を授与するほか、コーディネート作品を「2010年ニッセンコレクション」としてネットで販売。さらにそのモデルとしても起用する。
ニッセンとしても、100人規模が参加するコンテストは初めてだが、様々な特典の付与でより幅広いセンスのコーディネートを収集。「消費者と一緒にブランドを作り上げる」(広報)というスタンスを打ち出した形だ。
参加者は5月22日から6月27日までの期間募集。応募人数は公表を避けているが、「かなり多くの応募があった」(同)とし、出だしとしては、まずまずの手応えを感じているようだ。
応募件数が増加
ファッションショーで新客の獲得や通販サイトの売り上げ拡大につなげているがリトルアンデルセンだ。毎年8月、自社通販サイト「キッズオンライン」で販売する子供服ブランドのショー「東京トップキッズコレクション」を開催している。
ショーのモデルを務めるのは自社サイトの顧客で、モデルになるためには指定の期間内に同サイトで商品を購入してエントリーする必要がある。
応募期間の6月は、アパレル業界では夏のセールを控えてプロパー(正価の)商品が売れない時期。それにもかかわらず、同社では3週間の応募期間に、売り上げ全体の35%に当たる約700万円がエントリーするための購入金額で、昨年に比べて20%増えたとする。
同イベントは、今年8月に4回目の開催を迎えるが、ショーを重ねるごとに応募件数が増加。昨年の700人強に対し、今年は全国から約1150人の応募があった。
応募動機は、「友人の子供が出演していたから」や「社会経験を積ませたい」などとする家族が多く、一方で、出演した子供も「ショーの快感が忘れられない」として翌年も応募するという。
6月下旬に実施した今年のオーディションには、1次審査を通過した約250人の子供が参加したが、ショーに出演できるのは130人強で、応募総数の20%程度。
1次審査は同社が書類選考し、ショーに参加する各ブランドがオーディション参加者から出演モデルを決める。
ショーの当日、イベント会場では、出演者以外の子供を対象にした撮影会も行っており、その様子がキッズ雑誌に掲載されるなどの仕掛けも打っているため、オーディションに落ちた子供もショーを見にくるという。
ショーにもテレビやジュニア向けファッション誌などのメディアが入るため、その後の販促効果も期待できるという。
出演する子供の親はもちろん、落選した家族もチケットを購入し、ショー開催後はメディアへの露出が増えて新規の会員登録が増える。翌年は前回の応募者のほとんどが再びエントリーするため、これに新規会員が加わってイベント関連の売り上げが伸びるという好循環を生んでいる。
親子でファッションを楽しむ場を提供することで、「会員になるメリットが得られる仕組みを作った」(中村寿取締役)。
イベントにブロガー招待、消費者の生の声を発信
一方、通販サイトの顧客で自身のブログを持つ消費者を実店舗に招待し、商品の着心地などをブログにアップしてもらう取り組みを始めたのがアパレル大手のフランドルだ。
同社では、今年4月~6月までに計4回、自社通販サイトの会員限定で「フランドルガールズ会」を開催。実店舗やイベント会場でブランドごとに開催している秋冬物の展示会に招待した。
店頭に並ぶ前の商品を試着してもらい、率直な感想をブログにアップしてもらう取り組みだ。毎回、ネット会員向けのメルマガと通販サイト上だけで募集しているが、平均して100人程度が応募してくるという。
参加者を選定するに当たっては、事前に応募者のブログをチェックし、ブログとしての質やファッション感度、ブランドのイメージとマッチするかなどでふるいにかけているという。
そもそも、同社がオンライン会員で、かつブログを開設している、いわば"普通の女性たち"との関係作りに力を注ぐのは、ブログやウェブサイトなどネット経由の情報に慣れた消費者を意識してのことだ。
フランドルでは以前、有名人がブログで紹介した商品よりも、一般の主婦が紹介したファッションアイテムの方が多く売れたという意外な結果を得た。
このことから、企業の色が出過ぎると、消費者は引いてしまうということが分かった。「一方通行の情報提供はラジオの聞き流しと一緒で、結局何も頭に残らない」(江口敏之メディアコマース営業部長)として、情報操作をせず、ごく普通の女性たちにマイナスの部分も含めて積極的に書いてもらうという考えに方向転換した。
今秋には、ガールズ会に参加した顧客のうち何人かを同社の公認ブロガーとして通販サイトに専用コンテンツを設ける。当該ブログが読まれるようになれば人気ブログのランキングに入り、また違う人の目に触れて結果的にフランドルのサイトや実店舗への訪問も期待できるというわけだ。
なお、同社ではガールズ会の募集欄には、通販サイトのモデルを無償でも希望するかを聞いており、応募者の95%が「無償でもやってみたい」と回答。実際に、何人かは通販サイトのモデルとして活動を始めるなど、「非日常の世界や華やかな場に憧れを抱いている女性は多い」(同)といい、こうした経験が企業やブランドの顧客化にもつながるとする。
これまで、通販実施企業による消費者参加型のイベントを見てきたが、多くの場合は本格的な検証はこれから。しかし、消費者が不要不急の支出を抑える傾向にある中、「送料無料」や「セール」といった価格訴求型の販促策ではなく、時間や手間がかかっても顧客との間に生まれる絆(きずな)を重視した取り組みの中に、今だからこそ忘れてはいけない商売のヒントがありそうだ。
千趣会は、消費者参加型イベントとして4月、大阪で男性向けファッションカタログ「メンズ暮らす服」掲載商品のファッションショーを開催した。同カタログは主要顧客の40代女性の向こう側にいる男性顧客の開拓を狙い、今年3月に創刊したもの。今回のイベントは「パパをカッコよくするファッションショー」と題し、子供目線の切り口としたのが特徴だ。
同社はこれまで、既存顧客向けのサービスとしてコーディネート提案等のイベントは行っていたが、特定のブランドでオープンな形の企画を行うのは、今回のファッションショーが初めて。
予め一般から募集した子供(30人)が審査員となり、「メンズ暮らす服」掲載商品による人気コーディネートを決めるというもので、モデル(10人)も一般男性を起用。実際のショーでは、男性モデルが、事前に一般消費者から意見を募集した「パパのファッションで直して欲しいところ」の姿と、「メンズ暮らす服」掲載商品でコーディネートしたファッションで登場する形式で、コーディネートは「メンズ暮らす服」のバイヤーが担当。10種類のコーディネートの中から、子供が選ぶ人気コーディネートを決めた。
当初は、モデルを起用する案もあったが、一般男性(父親)から募集したことがリアル感や手作り感の演出に寄与。また子供から活発な意見が出されるなど、「雰囲気が良く、子供と家族のコミュニケーション作りのイベントにもなった」(広報)。
今回のイベントは、既存顧客から募集したパパのファッション改造プロジェクト「パパをカッコよくし隊」とNPO法人ファザーリング・ジャパン、千趣会で構成する「パパをカッコよくする委員会」主催の形で実施。敢えて企業色を抑えより公的なイベントとしたことが奏効し、地元の全テレビ局に取り上げられるなど、ブランド認知度向上の面でも一定の成果があったようだ。
審査結果は、自社サイトの専用ページで告知し、コーディネートに使用した商品の紹介や、カタログ請求の受け付け等で購買意欲の喚起を図っている。実売の部分では、効果を測定しきれない面もあるが、顧客を巻き込んだブランド訴求策として「こうしたやり方もあるということは分かった」(同)としている。
入賞者100人参加
また、ニッセンは、消費者参加型イベントとして8月に「ニッセン ベスト スタイリング コンテスト2010」を開催する。自社商品を取り込んだコーディネートコンテストで、応募者100人がモデルとして参加。上位入賞者には海外旅行等の副賞のほか、コーディネート作品をネット販売するなどの特典がある。
コンテストは、消費者から寄せられたコーディネートをもとに、新たなブランドイメージを作っていくことを狙いに行う。参加者は一般から募集し、まず書類選考で選出した150人に同社の商品を使った夏のコーディネートを作ってもらい、これをファッション関連の専門家等で構成する審査員が審査。コンテストに参加できる入賞者100人を決定し、さらに入賞者に秋のコーディネートを作ってもらい、一般消費者のネット投票で各賞を決める仕組みだ。
8月21日に都内で開催するコンテストには、入賞者100人がモデルとして参加でき、当日は同社のイメージキャラクターである女優・モデルの香里奈さんも出演。また、上位入賞者(グランプリ1名、準グランプリ1名、審査員特別賞5名)には、海外旅行や商品券などの副賞を授与するほか、コーディネート作品を「2010年ニッセンコレクション」としてネットで販売。さらにそのモデルとしても起用する。
ニッセンとしても、100人規模が参加するコンテストは初めてだが、様々な特典の付与でより幅広いセンスのコーディネートを収集。「消費者と一緒にブランドを作り上げる」(広報)というスタンスを打ち出した形だ。
参加者は5月22日から6月27日までの期間募集。応募人数は公表を避けているが、「かなり多くの応募があった」(同)とし、出だしとしては、まずまずの手応えを感じているようだ。
応募件数が増加
ファッションショーで新客の獲得や通販サイトの売り上げ拡大につなげているがリトルアンデルセンだ。毎年8月、自社通販サイト「キッズオンライン」で販売する子供服ブランドのショー「東京トップキッズコレクション」を開催している。
ショーのモデルを務めるのは自社サイトの顧客で、モデルになるためには指定の期間内に同サイトで商品を購入してエントリーする必要がある。
応募期間の6月は、アパレル業界では夏のセールを控えてプロパー(正価の)商品が売れない時期。それにもかかわらず、同社では3週間の応募期間に、売り上げ全体の35%に当たる約700万円がエントリーするための購入金額で、昨年に比べて20%増えたとする。
同イベントは、今年8月に4回目の開催を迎えるが、ショーを重ねるごとに応募件数が増加。昨年の700人強に対し、今年は全国から約1150人の応募があった。
応募動機は、「友人の子供が出演していたから」や「社会経験を積ませたい」などとする家族が多く、一方で、出演した子供も「ショーの快感が忘れられない」として翌年も応募するという。
6月下旬に実施した今年のオーディションには、1次審査を通過した約250人の子供が参加したが、ショーに出演できるのは130人強で、応募総数の20%程度。
1次審査は同社が書類選考し、ショーに参加する各ブランドがオーディション参加者から出演モデルを決める。
ショーの当日、イベント会場では、出演者以外の子供を対象にした撮影会も行っており、その様子がキッズ雑誌に掲載されるなどの仕掛けも打っているため、オーディションに落ちた子供もショーを見にくるという。
ショーにもテレビやジュニア向けファッション誌などのメディアが入るため、その後の販促効果も期待できるという。
出演する子供の親はもちろん、落選した家族もチケットを購入し、ショー開催後はメディアへの露出が増えて新規の会員登録が増える。翌年は前回の応募者のほとんどが再びエントリーするため、これに新規会員が加わってイベント関連の売り上げが伸びるという好循環を生んでいる。
親子でファッションを楽しむ場を提供することで、「会員になるメリットが得られる仕組みを作った」(中村寿取締役)。
イベントにブロガー招待、消費者の生の声を発信
同社では、今年4月~6月までに計4回、自社通販サイトの会員限定で「フランドルガールズ会」を開催。実店舗やイベント会場でブランドごとに開催している秋冬物の展示会に招待した。
店頭に並ぶ前の商品を試着してもらい、率直な感想をブログにアップしてもらう取り組みだ。毎回、ネット会員向けのメルマガと通販サイト上だけで募集しているが、平均して100人程度が応募してくるという。
参加者を選定するに当たっては、事前に応募者のブログをチェックし、ブログとしての質やファッション感度、ブランドのイメージとマッチするかなどでふるいにかけているという。
そもそも、同社がオンライン会員で、かつブログを開設している、いわば"普通の女性たち"との関係作りに力を注ぐのは、ブログやウェブサイトなどネット経由の情報に慣れた消費者を意識してのことだ。
フランドルでは以前、有名人がブログで紹介した商品よりも、一般の主婦が紹介したファッションアイテムの方が多く売れたという意外な結果を得た。
このことから、企業の色が出過ぎると、消費者は引いてしまうということが分かった。「一方通行の情報提供はラジオの聞き流しと一緒で、結局何も頭に残らない」(江口敏之メディアコマース営業部長)として、情報操作をせず、ごく普通の女性たちにマイナスの部分も含めて積極的に書いてもらうという考えに方向転換した。
今秋には、ガールズ会に参加した顧客のうち何人かを同社の公認ブロガーとして通販サイトに専用コンテンツを設ける。当該ブログが読まれるようになれば人気ブログのランキングに入り、また違う人の目に触れて結果的にフランドルのサイトや実店舗への訪問も期待できるというわけだ。
なお、同社ではガールズ会の募集欄には、通販サイトのモデルを無償でも希望するかを聞いており、応募者の95%が「無償でもやってみたい」と回答。実際に、何人かは通販サイトのモデルとして活動を始めるなど、「非日常の世界や華やかな場に憧れを抱いている女性は多い」(同)といい、こうした経験が企業やブランドの顧客化にもつながるとする。
これまで、通販実施企業による消費者参加型のイベントを見てきたが、多くの場合は本格的な検証はこれから。しかし、消費者が不要不急の支出を抑える傾向にある中、「送料無料」や「セール」といった価格訴求型の販促策ではなく、時間や手間がかかっても顧客との間に生まれる絆(きずな)を重視した取り組みの中に、今だからこそ忘れてはいけない商売のヒントがありそうだ。
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