長妻昭前厚生労働相は厚労相退任に際し、毎日新聞のインタビューに応じた。【聞き手・鈴木直】
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役所文化を変えることと格闘した1年だった。官僚ペースで進んできた方向性を変えることはできた。「少子高齢社会の日本モデル」という福祉ビジョンを作り、財源に必要な消費税率とともに提示する仕事は道半ばだったが、それ以外は全力を尽くした。悔いはない。
単に「消費税で社会保障」と言っても説得力がない。すぐに具体的税率が何%とは言えないが、将来の社会保障ビジョンを示せば「やはり消費税は必要だ」となる。だから、官邸側には「やるべきだ」と伝えた。
成果の一つが医療だ。10年度診療報酬改定は10年ぶりにプラス。医療崩壊を立て直すことができた。年金記録問題では800万人以上の人の記録を統合した。子ども手当は、後世必ず評価される。
官僚側からマスコミに流れるんだろうけど、言った覚えのないことが私の発言として報道されたことがある。実際の官僚との関係は良い緊張関係だ。私に良い印象を持っていない官僚がいるとすれば、省内事業仕分けと天下り根絶が原因だろう。「チマチマ無駄を削れと言われるのはたくさんだ」という恨み節も耳にした。
私に「年金の通知(内容)までチェックして細かすぎる」と言う官僚がいる。だが、意味の分からない通知を出したら問い合わせが殺到して国民も日本年金機構も困るだけ。そんな状態だから、当初は係長の仕事をせざるを得なかった。職員も大分変わり、最後は大臣としての仕事ができるようになった。
毎日新聞 2010年9月21日 東京朝刊