ココからは本格的に和声学・音楽理論・ノンダイアトニック・現代音楽による実践的なまとめのような意味合いになってきます。
自分で自分の曲のイメージに合う音を探していく過程において、まず原則的な事として覚えておいた方が良いのは、
現代的であろうと普遍的であろうと、対位法とは「3オクターブ間の板挟みの状態が基本であり、両者の底辺と天井は根音である」ということですね。


そして、底辺を「ベース」と言い、天井を「ソプラノ」と言います。
対旋律を作るというのは「ベースよりも○音階上」・「ソプラノよりも○音階下」を基本として作っていきます。
通常はベースを基軸にして作ります。その理由は「上から数えると、非常にややこしいから」です。記譜に慣れてないと間違えやすいのです。




「Cから長3度の音は?」と言われれば、ベースからだと、すぐに「それはEmだ」と分かるかもしれませんが、
ソブラノからだと「G#m」になります。よく参考書などで説明に使われるのは「根音から上へ何番目」というものばかりであり、
キチンと勉強している人でも、大抵は「下から上への計算」で慣れてしまっています。
ソプラノからだと「真逆に計算しないといけない」わけですね。まぁ、実際は両方出来た方が良いのですけどね。

この場合だと「G#」なんてスケール外の音が出てきていますが、それでも上から数えれば「長3度」です。
こういう考え方はノンダイアトニックの音を上手く曲の中に潜り込ませる際に役に立ちますが、
あまり堂々と目立つように入れると転調したような感じや変な印象を与えますので、使いどころには注意した方が良いですね。

ちなみに、同じ要領で「逆から数えた時に出てくる構成外音」は、
メジャースケールの場合は「♭U(C#・D♭)」と「♭V(D#・E♭)」と「♭Y(G#・A♭)」と「♭Z(A#・B♭)」の4音です。
それぞれが別の調への入り口になっています。普通は前項の「セカンダリードミナント」の構成の中に含めて使う音ですね。

これらが単独で出てくるとしたら、ベースの半音下降の時などに使われるものです。それか超高速のエレキやシンセのソロ演奏の時か。。。
少なくとも、セカンダリードミナントとして使われる場合を除き、通常は16分音符〜32分音符の高速スピードで使うか(ベースの場合は8〜16分音符)
それか「テンポ140〜200」などの、同じく高速〜超高速の楽曲の世界で使うようなものです。バラードなどでは間奏のソロ演奏でよく使われますね。



もっと簡略的に「自分の曲調に合う音を探したい」という場合は「ベース側の根音に合わせる音を探す」
明るい順で言えば「完全5度・長3度・長6度・完全4度・長7度・(短3度)・長2度」です。

ベース側の根音の「お供」として付属させる音が決まったら、それに対してソプラノ側の音を考える。。。
例えば、ベース側で「C+G」という完全5度を選び、ソプラノ側で「E」を選べば、それはトライアドです。
「F」を選んだら「Csus4」ですね。さらにソプラノ側にオクターブ(C)を付けるか・付けないかによっても力強さも協調性も変わってきます。

また、同じ「Csus4」の繰り返しでも「ベース C/G」・「ソプラノ F」と「ベースC/F」・「ソプラノ G」では
全く表現力が違います。もちろん「天井のオクターブを付けるか?」の選択によっても断然変わります。



上記のトライアドの話でも「ベース側 C+E」・「ソプラノ側 G」という、もう1つの選択肢があります。
また、それぞれ、ベース側とソプラノ側を逆にする考えもあります。

この2つの選択(+天井を付ける・付けないの2つの選択)+(ボイシングの選択)を交互に繰り返しながら、
根音を変えていく(コードを進行させていく)、ただそれだけでも「ちょっとしたピアノ伴奏」があっさり出来上がってしまいます。
実際、ニュース番組のエンディングで流れてるような曲は、この「sus4の使いまわし+アルペジオ化+対旋律化」を基軸にした作り方が主です。

そして忘れてはならないのが「余計なものを抜く」ということですね。
例えば、この「Csus4」の繰り返しでも、一番下のベースの「C」をどこかで抜かなければ、
延々とペダルポイント(ベース音が連続して同じ)になってしまいます。
まさか次のコードにいくまでずっとベースでCばかり打つわけにもいかないので、
どこかで消えてもらわなければなりません。

その時にも「1つ上の音がF」の時に消えてもらうのか?それとも「G」の時に消えてもらうのか?
それによって次の音の聞こえ方まで変わってきますので、ココは慎重に選ばなければなりません。
また「強拍(1,3拍目)」と「弱拍(2、4拍目)」を意識した作りも重要になってきます。



逆に強拍であっても、音が多くぶつかり合っていたら、どこかのパートの強拍の音を消してしまう事も重要です。
(そのため、昔ながらの対位法ですらも「一拍目は休符及び構成音を適宣に配置する」という事になっています。
 ある程度パート編成が多い場合、全てのパートが一拍目から音を鳴らしている方が「本来有り得ないこと」なわけですね)

さて「ピアノ伴奏・キーボード伴奏」だったら、こんな感じの考え方で良いのですが、これが「ギター・ベースの譜面」となれば
残念ながらこのような譜面ではダメです。ベースは一音鳴らしですし、ギターでは演奏不可能な譜面も多々出てきます。

そこで重要となるのが「カウンターライン」という考え方。・・・と言っても、筋道を決めて、それ以外の余分な音符を消す
+4分・8分・16分(または付点4分・付点8分・付点16分や3連符)に変えたり、休符と装飾音・経過音・刺繍音・半音を付け足すなどの作業で、
この伴奏コードの譜面に従った全く違うメロディ+「ギター向け・ベース向け」に変えていくことです。
(オーケストレーションやブラスの場合は音階の高さで3つ4つくらいに分けます)




このカウンターラインを探しだすために、前以て曲に合ったコード進行と複雑なボイシングを先に決めておく必要があるわけですね。
つまり「ピアノ・キーボード譜面」から別の楽器の譜面を絞り込む・改変して作っていくわけです。
コード進行と言えば「ギターで作るものじゃないの???」と真っ先に思われるでしょうが、もちろんそれでも構いません。
但し、ギターだと一度に鳴らせる音の数や音階・使えるボイシングにも限界があり、
あまり複雑な構成を踏み込んで考えるにはちょっと向いていないかもしれません。


どのみち、まず考えるべきはピアノであろうとギターであろうと1つの曲の世界観や背景を
十分に構築できるだけのコード進行(横の流れ)とボイシング(縦の組み合わせ)を
細部まで突き詰めて考えて作り込んでいくことですね。納得のいく進行とボイシングの流れが出来た時には
残りの必要な音が、もう勝手に見えてくるでしょう。(それが見えない内は作りこみが甘いって事になります)