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Windows 2000で
PCの電源が切れない?


[Q]indows 2000にアップグレードしたら、シャットダウンしても電源が切れず、再起動してしまうようになってしまいました。対処法を教えてください。

(木村紀子さん)
[A]

  電源関連のトラブルは、Windows 2000では頻繁に発生する問題の一つと言えます。ご質問のように再起動してしまうというケースのほかに、電源が自動的に切れなかったり、サスペンド状態からうまく復帰できなかったりといったトラブルも発生することがあるようです。

 これらのトラブルは、主にPC側の電源管理機能とWindows 2000側の電源管理機能が適合していない場合に発生します。Windows 2000では、電源を切ったり、サスペンドを行なったりといった電源管理の方法として、BIOS主体の電源管理機能である“APM(Advanced Power Management)”と、OSからの電源管理を主体とした、APMよりも細かな設定が可能な電源管理機能である“ACPI(Advanced Configuration and Power Interface)”の両方をサポートしていますが、PCのBIOSでサポートされていない電源管理方法をOSが選択してしまうと、適切に電源を制御することができません。このため、トラブルを解決するには、PC側とWindows 2000側の両方の状況を把握し、適切に対処する必要があります。それでは、順を追って対処法を説明していきましょう。

 まずは、現在Windows 2000が、APMとACPIのどちらの方法で動作しているのかを確認します。「マイコンピュータ」を右クリックして「管理」を開き、「デバイスマネージャ」から「コンピュータ」の項目を参照してください(図3-1)。

 「標準PC」や「ACPI(Advanced Configuration and Power Interface)PC」などと表示されているはずです。これは、Windows 2000で現在選択されているHAL(Hardware Abstruction Layer)というものです。Windows 2000では、PC側のシステム構成の違いを吸収するために、インストール時に自動的にシステムに適合したHALがインストールされます。ここで選択されている種類によって、APMとACPIのどちらで電源管理するかを決定しているわけです。ちなみに、選択されているHALと電源管理モードの対応は以下のとおりとなります。

 

◆ACPIで電源管理を行なう場合のHAL

・ACPI(Advanced Configuration and Power Interface)PC
・ACPIマルチプロセッサPC
・ACPIユニプロセッサPC

◆APMで電源管理を行なう場合のHAL

・標準PC
・MPSマルチプロセッサPC
・MPSユニプロセッサPC

 

 どちらの電源管理モードで動作しているかが分かったら、ここからはケース別に対応していきましょう。

 

●ACPIで動作している場合の対処方法

 

図3-1:「デバイスマネージャ」の「コンピュータ」の項目を見れば、現在自分のマシンがAPMとACPIのどちらで動作しているのかが確認できる

 まず、ACPIで動作している場合ですが、この場合はPC側のBIOSを最新版にアップデートします。とくに、Windows 2000の発売以前に購入したマザーボード、またはPCでは、Windows 2000の電源管理機能をまったく想定していない場合があります。多くの場合、ACPIに対応したBIOSにアップデートすることで、電源関連のトラブルが解消できます。

 もし、BIOSをアップデートしてもトラブルが解消しないときは、ほかのハードウェアがACPIに対応していない可能性があります。PCにイーサネットカードやSCSIカードなどの周辺機器が装着されている場合は、1枚ずつ挿してそれぞれ動作を確認するか、マザーボードと同様にファームウェアをアップデートしてみるとよいでしょう。以上、すべての方法を試しても解消されないときは、APMなどのほかのHALに変更するしか方法はありません。

 

●APMで動作している場合の対処方法

 

図3-2:APMモードで動作が解消できない場合は、「電源オプション」の「APM」ページにある「アドバンストパワーマネージメントを開始する」のチェックを外す

 一方、APMで動作している場合ですが、こちらも、まずはマザーボードのBIOSを最新版にアップデートしておきましょう。多くの場合、これだけでもトラブルが解消されますが、それでも解消されないときは、Windows 2000側でAPMのサポートを解除します。コントロールパネルの「電源オプション」を開き、「APM」ページから「アドバンストパワーマネージメントを開始する」のチェックを外しましょう(図3-2)。手動で電源を切ることにはなりますが、再起動は避けられるようになります。

 Windows 2000では、APM1.2で電源を管理していますが、PC側のBIOSがAPM1.2に対応していないと、シャットダウン後、電源が切れずに再起動してしまうというトラブルが発生します。今回の質問は、まさにこのケースと言えるでしょう。

 ただし、マルチプロセッサを採用したPCなどでは、コントロールパネルの電源オプションに「APM」ページが表示されないこともあります。この場合、機種によってはコントロールパネルの「ハードウェアの追加と削除」から「NT Apm/レガシサポート」を追加することで、APMでの電源管理を強制的に有効にすることができます(図3-3)。マルチプロセッサのPCで、シャットダウン後自動的に電源が切れない場合などは、この方法でAPMを追加してから電源を切ってみるとよいでしょう。

 

●APMからACPIに強制的に変更する

 

図3-3:“図3-2”の「APM」タブが表示されない場合は、「ハードウェアの追加」から「NT Apm/レガシサポート」を追加しよう

 現在、APMでWindows 2000が動作しているPCのBIOSをアップデートすると、場合によってはACPIでの電源管理が可能になる場合もあります。しかしながら、BI
OS側がACPIに対応したとしても、Windows 2000側の電源管理機能はAPMからACPIに自動的には切り換わりません。Windows 2000はインストール時にしかBIOSをチェックしないため、後からACPIに対応したとしても、一度APMでインストールしてしまうと、その後もAPMのまま動作し続けます。もし、入手した最新BIOSに付属しているREADME.TXTなどにWindows 2000のACPIへの対応などの記述があり、確実にACPIで動作することが分かっているならば、強制的にACPIに変更してしまうのも一つの手です。

 

 

図3-4:デバイスマネージャの「コンピュータ」の項目にある「標準PC」のプロパティを開き、「ドライバ」ページにあるドライバの更新を実行すれば、強制的にACPIモードに変更可能だ

 前述したデバイスマネージャの「コンピュータ」の項目で、「標準PC」のプロパティを開き、「ドライバ」ページからドライバの更新を実行します。ウィザードで「このデバイスの既知のドライバを表示して、その一覧から選択する」を選択後、「このデバイスクラスのハードウェアをすべて表示」をチェックし、シングルCPUの場合は「ACPI(Advanced Configuration and Power Interface)PC」、マルチCPUの場合は「ACPI マルチプロセッサ PC」を選択すれば、HALが置き換えられ、ACPIでの電源管理が可能となります(図3-4)。

 ただし、この方法はBIOSがACPIに完全に対応していなければ、Windows 2000が起動しなくなってしまう可能性があるため、安易に行なうべきではありません。このため、実際にHALを置き換える場合は、事前に十分なテストを行なうことをお勧めします。現在のHDDを新しいものに交換し、そこにWindows 2000をインストールしてみるとよいでしょう。完全にACPIに対応していれば、デバイスマネージャの「コンピュータ」の項目が、自動的に「ACPI(Advanced Configuration and Power Interface)PC」となります。

 

図3-5:Windows 2000のシステムCD-ROMのブート途中に「F6」キーを押せば、インストール時にも強制的にACPIのHALを選択することができる

 自動的にACPIが選択されないときは、前述した方法でデバイスマネージャからHALを強制的に変更しても構いませんが、Windows 2000のシステムCD-ROMからセットアップが起動したときに「F6」キーを押して、セットアップ時にHALを選択してしまったほうがよいでしょう。ここで「ACPI(Advanced Configuration and Power Interface)PC」を強制的に選択して無事にセットアップがすめば問題ありませんが、BIOS側の対応に不備があれば「ACPI(Advanced Configuration and Power Interface)PC」が選択できないか、選択できたとしてもセットアップ中にハングアップするので、ACPIの対応状況を素早く判断することが可能です(図3-5)。

(清水理史)
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