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【大リーグ】イチロー、静かな日米3500安打 球団に演出拒否を自ら要請2010年9月20日 紙面から
【シアトル秋野未知】静まりかえったままの快挙達成−。マリナーズのイチロー外野手(36)は18日(日本時間19日)、レンジャーズ戦の1回に内野安打を放ち日米通算3500安打(日=1278、米=2222)を達成した。ところが、イチロー自身が球団へ要請して電光掲示板での紹介など“演出”を拒否したため、ファンの総立ちもナインからのハイタッチも、そしてイチローの笑顔もなし。8回は投手内野安打で今季193安打とし、「10年連続200安打」には残り14試合であと7本とした。 節目の大記録とは思えない光景だった。1回に7月まで同僚だった屈指の左腕・リーの初球をたたくと、打球はボテボテのゴロ。慌ててダッシュした二塁手キンスラーは、ボールを握り損ねて一塁に悪送球した。記録は安打。日米通算3500安打の瞬間だ。ただ本拠地の拍手はまばらで、電光掲示板には何も表示されない。右翼に陣取った球場名物“イチメーター”を掲げる女性ファンだけが、日米国旗のイラストとともに「3500」のボードを揺らし、孤独に万歳した。 ベンチに戻っても、ブラウン監督代行とそっと握手しただけで、ハイタッチに近寄る同僚さえいない。実は、イチロー自身が球団に演出拒否を要請していた。 「ファンの楽しみを奪ってしまったことは残念だと思う。でも、僕としては、やっぱりそれ(電光掲示板などでの演出ストップ)をしなくてはいけない」。理由は2年前にあった。日米通算3000安打が敵地アーリントンの球場で歓呼をもって迎えられると、日米通算記録を考慮する是非が議論になった。また、同年は101敗に到達するなど今季と同様に低迷。記録を追い続けるイチローがチーム内で浮いていると一部で報道され、物議を醸した。 「2年前のことを勉強してますから、僕も。いろいろあったじゃないですか。そういうリスクをまた負うわけにはいかないので…」。偉業達成の喜びなど、みじんも出さない。さらにイチローはこう言葉を続けた。「そんな区切りだとは思っていない。ややこしいですからね、僕の場合は。通算っていうのが日米が付いちゃうから、ちょっと面倒くさい」 とはいえ、次のターゲットでもある10年連続200安打は確固たる金字塔。あと7安打を積み重ねたときこそ、万雷の拍手が背番号51を待っているに違いない。
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