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内山、号泣で奪冠誓う挑戦者に非情V2宣言

 チャンピオンベルトの前で余裕の表情を見せる内山高志=後楽園ホール展示場
 チャンピオンベルトの前で余裕の表情を見せる内山高志=後楽園ホール展示場

 「WBA世界Sフェザー級タイトルマッチ」(20日、さいたまCA)

 王者・内山高志(ワタナベ)が心を鬼にしてV2戦に臨む。ダブル世界戦の調印式と計量が19日、東京・水道橋の後楽園ホールで行われ、挑戦者ロイ・ムクリス(インドネシア)が調印式で号泣しながら亡きマネジャーへ王座奪取を誓った。壇上で泣き伏す挑戦者に、内山は困惑を隠せなかったが、気丈に王座防衛を宣言。日本ボクシング界史上初となる王座奪取からの3連続KOでV2を狙う。内山はリミットいっぱいの58・9キロで計量をパスし、その他3選手もそれぞれ一発でパスした。

  ◇  ◇

 リング上で情けは無用だ。調印式を終えた内山は冷静な口調で淡々と語った。「ムクリスはそれなりの思いがあるんでしょう。試合前にいろいろあって大変だと思う。そういう思いをぶつけてくるんでしょうけど、ボクシングは強い者が勝つ」と、現実に目を向けて言い切った。

 “アクシデント”が起こったのは調印式での質疑応答の時だった。司会者に意気込みを問われたムクリスは、7月にB型肝炎で亡くなったマネジャーへの思いを口にし、大粒の涙を流した。涙は止まらずに額を机に付けて号泣。会場は異様な雰囲気に包まれ、静まり返った。

 ムクリスは16日の公開練習の時にも同じように亡きマネジャーを思い出して号泣した。報道陣の前で涙を見せたのは今回が2度目だが、内山にとっては初めてで、マネジャーの悲劇もこの日初めて聞いた。渡辺会長を挟んで左隣にいたムクリスの号泣する姿に、内山は複雑な表情で視線を送った。

 静けさの中、ムクリスは「亡くなったマネジャーのおかげで、日本に来て世界戦が出来ることになった。必ずチャンピオンになってベルトをインドネシアに持って帰る」と熱く意気込みを語り、王座獲得を宣言。これに対して内山は「ベルトは絶対に渡さない」と自信を見せた。

 今回の試合には大きな記録がかかっている。KO防衛を果たせば、王座奪取から3連続KOとなり日本初の快挙となる。「勝つことが一番だけど、チャンスがあればKOを狙います」。挑戦者の夢を強打でたたきつぶし、日本ボクシング界に新たな歴史を刻み込む。

(2010年9月21日)
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