連敗を止めた魁皇(左)=両国国技館
「大相撲秋場所8日目」(19日、両国国技館)
かど番で進退がかかる大関魁皇が、徳瀬川を寄り切った。連敗を3で止め、4勝4敗の五分に戻した。過去12度脱出したかど番場所は黒星先行で後半戦を迎えたことは一度もなく、残り7日間に脱出をかける。横綱白鵬は旭天鵬をすくい投げで退け、連勝を「55」に伸ばした。全勝は白鵬と大関琴欧洲。平幕の嘉風は木村山に突き落とされ、初黒星を喫した。
◇ ◇
満員御礼の観衆は知っていた。魁皇が右上手をつかんだ瞬間に、勝ちが決まったかのような歓声が沸き上がった。ファンの後押しを受け、上手から投げを打ちつつ前へ。徳瀬川を寄り切ると土俵上でひと息ついた。
絶対の自信を持つ右上手からの攻めにかけた。支度部屋では「自分の相撲にこだわって、立ち合いすぐに形にこだわったのが何よりよかった」。名古屋場所で負傷した左肩と、今場所痛めた右ひざに氷袋をあてがう痛々しい姿で、4日ぶりの白星を素直に喜んだ。
負ければ、かど番脱出に黄信号がともっていた。過去12度のかど番で、8日目終了時点の成績が最も悪かったのは、06年春場所の4勝4敗だった。進退をかける魁皇にとって、前半戦での5敗はデータ上はデッドラインを超える黒星となるところだった。
痛み止めの注射で「だいぶ楽になった」(魁皇)という右ひざは回復しつつある。同期入門の貴乃花親方(元横綱貴乃花)も「実力者だから大丈夫。あれだけの記録を残しているんだから」と奇跡のかど番脱出、そして現役続行を望んでいる。
一筋の光は見えた。あとは横綱・大関のうちだれかを撃破して、自分の力で現役続行をつかむだけだ。魁皇は「考えてもしょうがない。一日一日をしっかり集中して、相撲を取れればね」とつぶやいた。9日目の把瑠都戦から勝負の後半戦が始まる。
(2010年9月21日)