日本人の世界王者で王座奪取からの3連続KO勝利は初の快挙。それでも内山はリング上から担架で運ばれた挑戦者を気遣い、控えめに喜んだ。「手応えはありましたね」と腫れた右の拳を氷で冷やしながら、勝利の余韻に浸った。
5回に右フック一撃でムクリスの意識を吹き飛ばし、追撃の連打で倒した。主審は10カウントを数えるまでもなく、早々と試合を止めた。
デビューから16戦全勝(13KO)。KO率は8割を超えるが、無理に狙っているのではなく「チャンスがあれば狙う」のが信条だ。この日も序盤から左で距離を取り、積極的なボディー攻撃で主導権を握った。5回は相手がガードと目線を下げたところに右フック一閃。理詰めの勝利だった。
圧勝劇とはいえ、ムクリスは“かませ犬”でない。世界的な名王者クリス・ジョン(インドネシア)のスパーリングパートナーとして力をつけ、最近までWBCでも3位にランクされていた。知名度以上に骨のある挑戦者を退けて「経験値として、精神的に成長した」と収穫を口にした。
1月に計画するV3戦は、暫定王者ソリス(メキシコ)との統一戦や元王者で2階級覇者の強豪リナレス(帝拳)との対戦を見据える。底を見せない30歳は「どんなオファーがきても準備して闘うだけ。自分はもっともっと強くなれる」と力強く言い切った。