11年度予算:宙に浮く政権公約 財源確保の見通し立たず

2010年7月29日 21時59分 更新:7月29日 22時42分

 27日に閣議決定した11年度予算の概算要求基準によって、民主党が昨年の政権交代時に掲げた衆院選マニフェスト(政権公約)が事実上、実現不可能なことがより鮮明になった。要求基準は「1兆円を相当程度超える額」をマニフェスト実現や成長戦略に充てるとしたが、マニフェストの工程表で11年度の新たな必要額は10兆円近い。明確な修正がないまま公約は宙に浮いた形だ。【坂井隆之】

 「国民との約束」として民主党が掲げた衆院選マニフェストには、10~13年度の4年間の各年度ごとに、子ども手当や高速道路無料化などの政策実現に必要な額を盛り込んだ工程表が記載されている。

 10年度予算で、当初、公約に必要とされた額は子ども手当の半額支給など7.1兆円に上った。各閣僚が予算獲得に血道を上げたが、財源確保は難航。2.5兆円の減税につながるはずだったガソリン税などの暫定税率廃止を断念するなどして予算額は3.1兆円にとどまった。

 11年度はさらにハードルが高くなる。必要額は総額12.6兆円に上り、10年度に実現した額を差し引いても新たに9.5兆円が必要。だが、概算要求基準にマニフェスト向けなどの新たな財源として示した特別枠は「1兆円を相当程度超える額」と遠く及ばない。

 しかも、この特別枠の対象は、政府が6月に策定した新成長戦略やデフレ脱却、国民生活の安心・安全など幅が広いため、公約が優先される保証はない。野田佳彦財務相は「財源確保と同時に考えていく」と公約は財源がなければ実現できないことを強調。既存予算の1割カットによる「特別枠」の財源確保すら容易ではなく、公約の工程表は完全に形骸(けいがい)化している。

 菅直人首相は6月の就任以来、11年度に5.3兆円もの事業費が必要になる子ども手当の全額支給を断念、公約の修正に動いている。就任前に財務相として厳しい財政事情を痛感したためだ。だが、公約にない消費税増税を掲げ参院選に突入し惨敗、党内からは「マニフェスト通りやるべきだった」(三井辨雄国対委員長代理)など不満が噴出した。

 とはいえ、公約実現が難しいことに、ほぼ異論はない。このため、前原誠司国土交通相が「予算が付かなかった場合にはどう説明していくのか」と問題提起。玄葉光一郎公務員制度改革担当相(党政調会長)も「合宿してでも閣僚間で整理した方がいい」と衆院選マニフェストの総括を求めた。ただ、対応次第では野党の攻撃材料につながるため、難しい対応を迫られそうだ。

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