ミイラ化遺体:49歳孫が虚偽説明し面会拒否 東京・足立

2010年7月29日 23時7分 更新:7月30日 0時36分

 111歳で東京都の男性最高齢者とされていた加藤宗現さんとみられるミイラ化遺体が足立区千住5の自宅で見つかった事件で、民生委員の女性(73)が2月に訪問した際、孫の男性(49)が虚偽の説明をして面会を拒否していたことが警視庁千住署の調べで分かった。「祖父は5年前から岐阜の施設に預けている」という孫の説明を不審に思った女性が区に通報し、事件の発覚につながったという。

 女性はシルバーパスを配るため92年から年1回程度、加藤さん方を訪問。その度に長女(81)が「父は体調不良で休んでいる」などと面会を拒否した。女性は、加藤さんが生活保護受給者ではなく独居老人でもないことなどから積極的な調査はしなかったという。

 疑念を感じたのは今年1月下旬。区役所での住民の意見交換会で加藤さんの話題になり、参加者が「ここ数十年、誰も見ていない」と口をそろえた。

 これをきっかけに女性が2月4日に加藤さんの孫の男性に安否をただすと、孫は「5年ほど前から面倒を見きれなくなり、岐阜の方の施設に預けている」と説明したという。

 女性から連絡を受けた区は住民基本台帳法に基づく調査の開始を決定。介護保険や国民健康保険の利用状況を調べたところ、利用実績が一切なかった。同月内に訪問した職員に長女は「本人が会いたくないと言っている」と話したが、6月には「父の弟がいる岐阜で暮らしながら近くの寺で説法をしている」などと説明が変遷。寺に照会し、事実でないことが判明した。

 それまで区は、最高齢者として氏名を公表する可否を聞くため08年8月と09年8月の2回、加藤さん方を訪問していたが、親族は公表を拒否したという。

 一方、加藤さんとみられる遺体は1階6畳間で、下着姿でマットにあおむけになっていた。司法解剖で死因や死亡時期は特定できなかったが近くの将棋盤の上に78年11月5日の新聞朝刊と同9日付の足立区広報が置かれており、千住署はこの時期に死亡したとみている。

 現場はJR北千住駅の北約800メートルの住宅街。近くの男性(72)は「(加藤さん方に)最高齢の人がいるなんて聞いたことがない」と驚いた表情。別の女性(78)は「(04年に101歳で亡くなった)おばあちゃんは知っているけど、おじいさんがいたことすら知らなかった。気味が悪い」と話した。【山本太一、内橋寿明、伊澤拓也】

 ◇「死を疑う情報なく」

 足立区の初鹿野(はじかの)学・戸籍住民課長らが29日会見し「加藤さんの死を疑う情報はなく、家族の説明を信じるほかなかった」などと釈明した。

 区は07年4月に加藤さんを区内最高齢者と認定。08、09年に2回面会を拒まれた時点で強く生存確認をすべきだったと問われ、担当者は「結果としてはそうだが当時は『静かに暮らしたいのだな』と解釈した。強制的に家の中に入る権限もない」と述べた。

 また、高齢者表彰の一環として、これまでに総額約15万円を支給していたが、担当者は「申請時に提出された戸籍や住民票に不備はなかった」と話した。【内橋寿明】

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